その後、宗は奈津美を探しはしたが、連れ戻す気は無かった。
無難に、離婚届けに署名と印鑑を押させると、そのまま、別れた。
しかし、宗の手元には、奈津美のこさえた借金が、ずっしりと残っていた。
その後、麗美と翔が、街を歩いていると、奈津美を見かけた。
奈津美はすっかりやつれ、変わり果てていた。麗美は
「奈っちゃん」
と、奈津美に駆け寄った。
「元気にしているの?・・・もう、帰ってこないの?」
と訊ねると、奈津美は、大きく首を振った。
「そうなの」
と麗美が言うと、翔が
「麗美、先に行っちゃうよ、早くおいで」
と、麗美を呼んだ。
「じゃあ、奈っちゃん元気でね。」
というと、麗美は翔のところへ戻って行った。
『ねえ、母さん、僕たちが奈津美をあんなふうにしたのかな』
『それは違うわ。奈津美さん、母さんの姿が見えていたでしょう。あの時点で、幻覚があったのよ。その後、妄想もおこしていたし、自分の中に違う世界が出来てしまったのね。つまり、精神的な病気、だから、翔ちゃんのせいじゃないし、でも、私が怒りにまかせて奈津美さんの頭をかすめたことがあったわよね・・・いいえ、なるべくしてなったのよ。
どの道、私達一家は、あの人にかき回されたし、一番悪いのは宗さんね。家族を自分で壊したんだから。奈津美より、性質悪いよね。』
その後、奈津美が精神病院に入院していると、うわさを聞いたのは、ずっと後になってからだった。
By , Yuri-Hitaka