蒼紺のベール 第八章 終演(44ページ) | 緋鷹由理 

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たぬこと熊太の徒然日記を主に掲載しています。



八、「終演」

そんなことがあって、宗はにわかに、奈津美の異変に気づき始めた。

そして、宗の本性なのか、身勝手なのか、奈津美に疑問を持ち始めると、夫婦の間は、とたんに冷えきっていった。

美夕が死んだとき、形でしか悲しまなかった男に、奈津美の追い詰められた気持ちなど、わかるはずも無く、それから一週間後、最後の事件がおきる。

それは、麗美の甲斐甲斐しい看病で、奈津美がショックから立ち直った頃、奈津美も、本来の生活に戻り、ただ、宗だけが次第に、奈津美から遠ざかるようになり、麗美も不自然さを感じ始めた頃だった。

コタツで寝転んでいた麗美の手に、奈津美の足が絡まった

「痛っ!」と、小声でつぶやいて、麗美は、フッと寝返りをして、長い髪をかきあげた時、

「イヤー!!!」

という奈津美の悲鳴が響き、そのまま奈津美は、玄関から飛び出していった。

 麗美がコタツで寝転びながらまどろんでいる頃、奈津美の前に、青いベールが現れ、今までは、はっきりしなかった顔が、はっきり見えた。

 その顔は、奈津美の顔だった。奈津美はベールに怯えながらも、その顔をはっきり認識した。

 まさしく自分の顔だ、しかし、しばらくの間に、まるで年老いたような、醜い顔になった。

 奈津美は、一歩、二歩と下がりながら、

「わたしが怯えていた青いベールの中にいたのは私自身!」

 そして、奈津美の足が、麗美の手に絡まったとき、奈津美は、誰かに足を摑まれた、と勘違いした。麗美が髪をかきあげ、見上げたその顔は、醜い自分の顔だった。

 奈津美は何が何だかわからなくなり、宗の家を飛び出し、二度と帰ってくることは無かった。

奈津美が、麗美を美夕と呼んだ、幽霊騒ぎから、ひと月後のことだった。

登場人物

 高原 美夕(みゆう)     母親、病死して幽霊になる

 高原 翔(しょう)       長男、中学1年

 高原 麗美(れみ)   長女、小学6年   

 高原 由宇(ゆう)      次男、小学2年

 高原 亜姫(あき)     二女、幼稚園5歳

 高原 礼(れい)       祖父、(有)たかはらの社長

 高原 ユミエ        祖母、

 高原奈津美(なつみ)    後妻

 高原 宗(そう)      父親、(有)たかはらの専務

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