八、「終演」
そんなことがあって、宗はにわかに、奈津美の異変に気づき始めた。
そして、宗の本性なのか、身勝手なのか、奈津美に疑問を持ち始めると、夫婦の間は、とたんに冷えきっていった。
美夕が死んだとき、形でしか悲しまなかった男に、奈津美の追い詰められた気持ちなど、わかるはずも無く、それから一週間後、最後の事件がおきる。
それは、麗美の甲斐甲斐しい看病で、奈津美がショックから立ち直った頃、奈津美も、本来の生活に戻り、ただ、宗だけが次第に、奈津美から遠ざかるようになり、麗美も不自然さを感じ始めた頃だった。
コタツで寝転んでいた麗美の手に、奈津美の足が絡まった
「痛っ!」と、小声でつぶやいて、麗美は、フッと寝返りをして、長い髪をかきあげた時、
「イヤー!!!」
という奈津美の悲鳴が響き、そのまま奈津美は、玄関から飛び出していった。
麗美がコタツで寝転びながらまどろんでいる頃、奈津美の前に、青いベールが現れ、今までは、はっきりしなかった顔が、はっきり見えた。
その顔は、奈津美の顔だった。奈津美はベールに怯えながらも、その顔をはっきり認識した。
まさしく自分の顔だ、しかし、しばらくの間に、まるで年老いたような、醜い顔になった。
奈津美は、一歩、二歩と下がりながら、
「わたしが怯えていた青いベールの中にいたのは私自身!」
そして、奈津美の足が、麗美の手に絡まったとき、奈津美は、誰かに足を摑まれた、と勘違いした。麗美が髪をかきあげ、見上げたその顔は、醜い自分の顔だった。
奈津美は何が何だかわからなくなり、宗の家を飛び出し、二度と帰ってくることは無かった。
奈津美が、麗美を美夕と呼んだ、幽霊騒ぎから、ひと月後のことだった。
登場人物
高原 美夕(みゆう) 母親、病死して幽霊になる
高原 翔(しょう) 長男、中学1年
高原 麗美(れみ) 長女、小学6年
高原 由宇(ゆう) 次男、小学2年
高原 亜姫(あき) 二女、幼稚園5歳
高原 礼(れい) 祖父、(有)たかはらの社長
高原 ユミエ 祖母、
高原奈津美(なつみ) 後妻
高原 宗(そう) 父親、(有)たかはらの専務
*☆*:;;;:*☆*:;;;: *☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;: *☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;:*☆*:;;;: *☆*:;;;:*☆*:;;;:
草薙香 グランディオ・学園祭
http://ameblo.jp/kusanagi-kaori
息子の小説です、是非訪問お願いします。
私の父 草薙香のお爺さん