入る前に
ーこのポストは直接なネタバレで書かれているため、苦手な方は避けることをお勧めします。
ー個人的には日本語、また翻訳の勉強も重ねしているので、おかしいところへの指摘は歓迎です。


翻訳:

最後のパート


336p

マキシミンには自由をあげた。彼にはそれが一番似合う。
けど彼はまたケルティカに、自分の所に帰るって言ったりはしないだろうか。。。

シャルロットは考えを払うように首を振ってから坂を下った。準備を終えた軍隊はシャルロットが来ることだけを待っていた。修練兵が駆ってきた灰色の馬に登り隊列へ向かった。馬に乗ったエトワールたちが最前列に堵列していて右の端に魔法使いたち、その後ろに歩兵たちが立った。アレマン団長とナゼリオン、ジョアンヌ、グスタブもそこにいた。一回りしながら全員と眼差しを交した後にど真ん中に立ち止まった。

「大公国オルランヌの運命は本日の其方たちに掛っている。私利私欲を満たすため千年も続いてきたこの国を揺さぶる貪欲な者たちを、大公殿下の唯一なる後継者であるこのシャルロット・ビエトリス・ド・オルランヌは許さぬ。そばを見よ。堂々で勇敢な者たちを見よ。其方たちのような忠義のある臣下を産み出した偉大な大公国を共に救おう。地理滅裂に怯えている彼らより私たちは圧倒的に強く、必ず勝利する。反逆与党を残らず殲滅しろ」

人々ははためく赤いマントを纏ったシャルロットとその目の中の炬火を見ていた。断固として先鋒に立ち、退けない事を決意する公女を前にしたらもしかしたらと迷いを抱いていた兵士たちの武器を持った手にも力が入った。
エトワールたちは特に格別な感慨を感じながらシャルロットを見つめた。かつて修練兵だった少女はいまや彼らを導き勝利を求める者であった。
後ろの隊列に立っていたジスカルはこっそり微笑んだ。公女の演説は支配者として督戦するというより仲間として励む言葉だった。見れば見るほど近くで観察する価値のある存在だ。

シャルロットは劍を引き抜いた。高く掲げた。

「大公国の栄光のために!」

大勢の声が丘を埋めながら応じた。

「大公国の栄光のために!」

土煙を起こしながら走り出した。後に続くこ馬蹄の音を聞きながら速力を上げた。一気に丘を下がって敵の急所に飛込むために。

同時に頭の中では真実を痛いほど顧みた。認める他無い。死を覚悟したこの瞬間に一番の後悔は兄を救えなかったことも、紡績屋の地下に閉じ込められた人たちとした約束も、アイアン・フェースに出来なかった復讐でもなかった。

どうして其がもっとも自分を苦しめるのだろう。
閉店したカフェの3層の探偵事務所に二度と戻れないという事実が。

(7卷に続く)