状況が分かったローランはすぐ剣を抜いて侯爵に突き出して言った。

「この行動はあなたが公女輦下(*)の敵だと証明したようなものだ」
「何?無礼な!私はオーギュスト・ド・カンペシュ侯爵だ!近位兵ごときが私に刃を向けるとは!」

ローランもその時になって相手が誰だかわかったけどビビることなくすぐ言い返した。

「公女輦下の安全を損しようとした者は誰であろうとただで帰らせてあげられない。望むなら決闘と見ても構わない」

カンペシュ侯爵が決闘で何人も殺したのを自慢している話はローランの耳まで届いたくらいに有名だった。侯爵は少しだけ慌てるようだったがもうすぐ大声に嘲笑った。

「兵士ごときがこの私と決闘だと?平民たちの首に侯爵家門の高貴たる刃は勿体ないだろう?早く退け!」
「私は兵士じゃなくてエトワールで、ローラン・カスティーユと言う」

あの夜ローランは久々に休暇を貰って故郷に行こうとしたのを急いで走って戻ったのでエトワールの制服を着ていなかった。侯爵はエトワールという言葉にびくっと驚いて様々な厚かましい言い訳で身を引いた。決闘の申請を一度も断ったことがない名声が面目なくなるくらいだったがあの者には幸いにも「相手は貴族でなきゃならない」という名分が残っていた。もうすぐ人々が何人も駆けつけて二人を引き離し状況は一段落された。

この事件は通称《ショモン事件》と呼ばれることになったしその夜に公女が殺されかけたので《暗殺企図》とも呼ばれた。でも本当に暗殺企図だったか、なら背後は誰だったか、伯爵夫人は自分で陰謀を企んだのか巻き込まれた犠牲者だっただけかは証明されなかった。死んでしまったから罪を問う方法もなくてそのことで罰を受けた人もなかった。ただ二日後、回復されて宮に出たシャルロットはカンペシュ侯爵と出会って笑いの無い一言を渡した。

「ローラン・カスティーユが平民だからお前と剣を合わせる資格がないと言ったそうだな」

次の日、ローランは大公殿下に呼ばれて行って公女の命を守った功を労われると同時に騎士に叙任された。


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「この剣は大公殿下から私の叙任式の日に、公女輦下を守るように下賜された剣です。輦下はここにおられないのでその代わりにこの剣に口を当てると謝罪するという意味で受け入れます」

膝を付いただけでも屈辱なのに剣に口を当てろとは、想像も出来なかった要求に侯爵の口元が震えた。すぐにでも立ち上がって怒鳴りたかったけど脚の自由は相変わらず聞かなかった。

「一体何をした?」

小さく噛み吐くような声はローランだけに聞こえた。ローランは頭を下げて侯爵の目を眺めてから微風のように軽いせいで少し嘲笑うようにまで聞こえる口調で言った。

「心から謝ると良いことが起きますよ」

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*殿下よりは一階だけ下の地位にある人への敬称のようですが、今まで他の小説でも見たことがない。
韓国語で書いてあるから何の漢字なのか分からない。
いや、普通使われない言葉に注釈くらい付けるケースはあるけど、なぜこの小説の場合は読者たちが物知りだと思うんだ。。。
とにかく調べた結果、一番それらしきものは輦下だったのでこれで。でもやはり正確なのか分かりません。