キーン教授がため息をついて言った。

「マキシミン、そいつはプシキで間違いない。プシキというのはその。。。 お前は初耳だろうけど、ともかくフライパンで殴って追い払える存在ではないことだけは覚えておくように」

プシキ?急に何かを思い出したマキシミンは喜ばしい顔をした。

「あ、プシキならエネルギーが集まったとこで不規則に観測されるエネルギーの生命体でしょう?小さくて、言葉は通じなくて、魔法で消すと塵と言うのを出して、それで色んな魔力エネルギー源が作られるというそいつですよね?」
「。。。」

マキシミンは昨夕にルームメイトから受けた速成課外で、ネニャプルのレベルを心配する教授たちを少しは安心させたかっただけだけど、教授たちはむしろ混乱に陥って不便な顔になった。特にホイオーク教授がそうだった。こいつ、初級魔法学の答案用紙には「昨夜の飲酒の必然性に関する弁」などを書いて置いたくせに。。。

キーン教授が言葉を継いだ。

「ごほん、そう、珍しいことに正確に知っているものだな。ところでその日プシキはどうやって出た?」

*

「うん!いい情報をくれたら僕たちが銀貨を一つあげる。ネニャプルの学生、見た?」

彼らはため口をするルシアンを飽きれた目で見たけど、ルシアンは貴族でもなさそうな相手が初対面からため口を利くのに自分だからって敬語を使う理由を一つも思いだせなかったのでただ笑顔で答えを待った。魔法使いたちはこいつらは正気か、という表情で顔を合わせたけどその後またボリスを見たら戦うつもりが溶けて無くなったので礼儀正しく質問した。

「どこから来ました?」

*

三日目になるとマキシミリアン・ド・フレサンス卿は人気絶好調の社交界の紳士、もしくは優雅な貴婦人からの恋慕を受ける不思議な美男子という評価を得ることになった。貴婦人かどうかは正体を知らないから好き勝手に言ってもいいとして、なぜ突然と美男という主張が加えたのかマキシミンの常識では理解できなかったが、貴婦人の恋慕を受けるならまず美男でなきゃ、という人々の常識が現実の歪曲を発生させたようだった。

そんな状況でも美男子かどうかを判断するにはてめえの目を使えばいいだろう、と一喝したりはせず、マキシミンは平穏を装っていた。だけど内心では不安に捕らわれた。

*

「あんたね、やはりどんな手を使っても私が雇う」

マキシミンは慌てたというよりは飽きれた表情でイスピンを見てから言った。

「おい、そんな態度で出たら値段が上がるぞ?」
「大丈夫。金持ちだもの、私。値段上げたい?いくらでも上げて」
「。。。」

しばらくして、マキシミンは眉間を歪めて―指を立ててテーブルを何かい叩いた。

「お前のそんな態度はネニャプルの前で見た時と変わってねえけどよ、その時してあげたら良かった話を俺が一つしてあげよう。人間は、チェスの駒ではねえんだ。お前がチェス盤を広げていてちょうどあそこに置けばいいそうな人間が見つかったからって好きなようにその場に入れ込むことは出来ないんだよ。誰が自分を駒と見る人の言葉に耳を傾けたくなる?」

もしかしたらそれはイスピンが世界をみる観点をそのまま映した比喩だったはずだ。(中略)

「会話がしたい?ならお前もチェス盤に下りてこい」

イスピンは瞳だけ動かしてマキシミンの指先を見つめた。少しだけそうしてから言った。

「分かった。雇うと言ったことは取り消す。そして謝るわ。また最初に戻って言いましょう。私にはあんたの助けが要る。私を手伝って。仲間になって下さい」

マキシミンはイスピンの大きい黒い目を少しの間眺めた。
しばらく後彼は少しだけ頷いた。イスピンは頷き返して見せた。

「ありがとう」

*

「お前はさっき、私の命を狙った。だからすぐ頭を飛ばさなきゃならないけど、誰の命令か調べるために生かしておいたんだ。お前みたいな消耗品は限りなく生み出されるから一人くらいいてもいなくても私には別に変らない。だけどお前が口を開けないというなら、首一閃で終わるんだ。それは当たり前な私の権利だから」

そりゃ大公位の後継者を威嚇した者には即決処分が出来るからだ。マキシミンはそこまでは知らなかったけど、イスピンが普通の家門の出ではないだろうという推測だけは強くなった。あんな言葉は支配階層でなければ吐き出せない。イスピンが月並みの家門の出ではないだろうという推測だけは強くなった。あんな言葉は支配階層でなければ吐き出せない。

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そろそろ疲れたので2券はここでお終い