2014年3月30日(日曜)
シンガーソングライター
“おおともゆう”
としての門出を祝うイベントを、
渋谷のセンター街を越えた地下にあるライブハウス、「Wasted Time」にて開催した。
あくまでバンドスタイルにこだわった演奏形態で歌いたかったので、元バンドメイトや、友人のミュージシャンを多く誘ってのパーティーライブになった。
元々高校時代の友人で、僕の学生の頃のギターの先生であった芦田葉君がトップバッターであった。
次に2015年にWalkingsとしてフジロックに参戦した井上拓己君。
三番目に渋谷Wasted Timeの下見に行った時に、たまたま歌っていて、僕の心を鷲掴みにしたシンガーソングライターの神楽サティさん。
四番目は、SPACE SHOWER MUSIC所属の新進気鋭若手ロックンロールバンド、Gliderの4人。
そして、五番目に、
元バンドメイトが作ったバンド、
Kuroi Parabola
そして、最後は
わたくし、おおともゆう率いる、
おおともゆうバンド。
本当に熱の入ったイベントで、
音楽に対する楽しさと真剣さを誰もが持ち合わせて盛り上がった大イベントだった。
そこから約2年の時を経て
アコースティック弾き語りスタイルを身につけた僕は、自身が主催の「シンガーソングライターの夜」というイベントの第二弾を、久しぶりの渋谷Wasted Timeで開催することになった。
とあるイベントの仕事で、知り合った先輩が偶然にも渋谷Wasted TimeでPAをしていると聞いて大変驚いた。。
そのつながりで、再び2年ぶりに渋谷Wasted Timeを訪れることになった。
渋谷Wasted Timeというライブハウスは、
地下にあるため、店内が薄暗く、
各テーブルに置いてあるキャンドルライトのみがほぼ唯一の明かりとなっている為、大変落ち着く場所だ。
そしてカウンターの上に置いてあるムスクを焚いた香りがふわっと店内に広がり、一気にアートな空間へと変貌する。
ここに楽屋はない。
楽器置き場もない。
出番を控えるアーティストの控え室もない。
正直ライブハウスとしてはアーティストのことを何も考えていない環境だなと初めは思った。
なのに、初めて店内に入った瞬間、
僕の考えが覆された。
ライブハウスというより、
芸術を愛する者同士が集まるサロンのような雰囲気が店内の壁や床からひしひしと伝わってくるのである。
こればかりは説明が出来ない。
秘密の隠れ家そのものなのだ。
そして、とあることに気がついた。
ここにはアーティストとお客さんを密接に繋ぐ秘密があることに。。
普通、
アーティストはリハーサルが終わったら、楽器を楽屋に置き、出番まで外で時間を潰すか、楽屋でアーティスト同士喋っているかどちらかである。
まあごく稀に他のアーティストをお客さんと同じように見る謙虚なアーティストもいるにはいるが、日本のほとんどのライブハウスが対バンと謳っている以上、心の底から共演者を仲間と思っているアーティストは少ない。ほぼいない。
皆本当は互いにライバル視し、
牽制し合っている。
なので、楽屋の雰囲気も殺伐とし、
うわべの会話がほとんどである。
そして、アーティストが中に篭ってしまっている以上、お客さんも目当てのバンドを見るとすぐに帰ってしまう。
その原因の1つとして、
ライブハウス側の出演アーティストへの配慮。再入場不可にしていることが挙げられる。
再入場不可にすれば、お客さんは目当てのバンドを見た後も、せっかくだから、もったいないと思い、ドリンクも売れるわ、他のアーティストも見ていってもらえるわの美味しいとこ取りなのである。
と、ライブハウス側は考えているが。
はっきり言って、余計なお世話である。
お客さんは見たいアーティストを見て、
他のアーティストが気になれば、
再入場可にして、もう一度入場させれば良いではないか。
このような負の連鎖が巻き起こり、
日本中ほとんどのライブハウスは殺伐としている。
しかもライブハウス側は高いノルマを金のないアーティストに叩きつけ、
君らも上手くなったら大手レコードレーベルに紹介するから、それまでうちで頑張ってね!などと嘘を吹く。
右も左も分からないアーティスト達はそのドツボにはまる。
そんなコネなんかないくせに。
これは余談だが、
高いノルマを払ってライブハウスに出演してもチャンスは来ない。
それならコンテストを受け続け、デモテープをどんどんレコードレーベルに送り、路上ライブやノルマの低いカフェなどで定期的に開催したほうが圧倒的に効率的。
話が脱線してしまったが、
渋谷Wasted Timeはなぜこれほどまでにアーティストにとっても、お客さんにとっても居心地が良い場所になり得るのか?
僕のお客さんは渋谷Wasted Timeだとかなり飲んでいる。そして笑い声が絶えない。
そして何故こんなにもアーティストとお客さんを密接に繋いでいるのか?
その答えは至極簡単。
アーティストに楽屋がないからである。
そして再入場可能だからである。
アーティストにとって本番までの待ち時間は、緊張の波に押し流されないように自分を保つ、きつい時間だ。
それを会場の中で過ごすことによって、
共演者から話しかけられたり、
お客さんと話したりすることによって、
アウェイ感がなくなる。
しかも本番の会場で過ごすのだから、
ステージに対する緊張感も薄らぐ。
そして多くのアーティストは、
本番前を会場で過ごすことに居心地の悪さを感じているはずだ。
要するに、スターを気取っている為に、
本番前に客前に出ることがダサいのである。
しかし、ここ渋谷Wasted Timeには楽屋も、荷物置き場も、楽器庫も、控え室も、何もない。
なので、アーティストが自身に纏った泥の鎧が全て剥がれてしまうのである。
これがアーティストにとってのアットホームな居心地の良さを助長している。
そしてお客さんにとっても、
好きなアーティストと共に出来る限り長い時間を過ごしたいという願望が叶うのである。
しかも店内には椅子とテーブルが数台置いてあるため、座ってゆっくり話が出来る。
アロマキャンドルの光に揺られながら。。
ここ渋谷Wasted Timeは、
シンガーソングライターや
バンドにとってノルマも非常に低く、
PAの質が異様に高い。
僕はこれまでたくさんのライブハウスで演奏してきたが、ノルマが高くて、音も雰囲気も悪い所を何度も経験してきた。
その中でも下北沢LOFTと、渋谷Wasted Time、そして下北沢屋根裏には音楽だけではなく、人に対する愛があった。
そして歴史も長い。
本当に大好きな箱だ。
しかし、出会いには別れが必ずついてまわる。
2015年3月31日(火曜)
下北沢屋根裏閉店。
非常にショックであった。
この日のことは過去の僕のブログに詳しく書いてあるので、気になった方は、それを読んで頂きたい。
2020年東京オリンピックに向け、
大小様々なドームやホールが改築され、
以前の姿を変えつつある。
アーティストにとってライブハウスとは、
ため息を心置きなくつけるところだと思っている。
普段は周りから責められがちの、ため息や、夢物語、大口を周りを気にせず大声で吠えられる安息の地なのである。
アーティストそれぞれ自身のホームグラウンドを持っている。
それが奪われた時のショックはかなり大きい。
今回
また自身が企画するイベント。
おおともゆう主催
「シンガーソングライターの夜Vol.3」
を、5月28日(土曜)に渋谷Wasted Timeで開催することに決定しました。
各出演アーティストが決まり、
意気揚々としているところへ、
悲しいニュースが。。
渋谷Wasted Time
店主中島睦(なかじま むつむ)さんより。
<渋谷WastedTimeご利用の皆様へ、お詫びと悲しいお知らせ>
実はこの二週間あまりでお店の状況が急転回して、大変残念な結論が出てしまいました。
渋谷WastedTimeは諸事情により、2016年5月末で営業を停止せざるを得なくなりました。
詳しい事情は、関係各位にご迷惑をかける場合があり得るので、ここでは控えますが、当店の落ち度による所もあります。
あまりに急な話で、こちらも混乱しておりますが、もはや5月いっぱいであの店舗からの撤退という結論を受け入れるしかありません。
物凄く悔しい気持ちでいっぱいですが、どうにも致し方ありません。
今後のライブやイベントを楽しみになさっているお客様、出演者の皆様には、大変申し訳ありません。
心からお詫び申し上げます。
そして13年と9か月、ご愛顧頂き、本当にありがとうございました。皆様に感謝申し上げます。
僕もスタッフも大変寂しく、とても悲しいですが、しかし全員、体は元気です。
とりあえず今月、来月は今までと同じく、より楽しく営業しますので、ぜひお顔を出してください。
もう最後ならば出てやろうとお考えの出演者の皆様、5月はまだ多少対バン枠ありますので、個別にメッセージを下さいませ。
また5月中~下旬にフェアウェルパーティ的な物を考えています。
多分深夜になります。
決まりましたら改めてお知らせしますので、よろしくお願いいたします。
この文はシェア等して頂いても構いません。
取り急ぎ。
これをFacebookで読んだ時には愕然とした。。。
またもや、僕のホームが1つ失われてしまった。
不幸中の幸いとして、
5/28(土曜)
「シンガーソングライターの夜Vol.3」は開催致します。
渋谷Wasted Time史上最大の伝説を残したいと思います。
1番残念なのは、
マスターの中島睦さんだと思う。
僕も先日そんなことはつゆしらず、
1人でふらっと飲みに行ったことがあった。
今思えば、少し悲しげな表情を浮かべた無口なマスターが、友人の方と共に、DJブースで酒を飲みながら、好きな音楽を流していた。
Wasted Time
【無駄な時間】
大切な時間を大切な仲間たちとじっくり過ごしてきた中島さんだからこそ言える心に響くお言葉。【Wasted Time】。。。
そんな限りあるWasted Timeをぜひ共に過ごしたい。
多くの方と時間を無駄にしたい。
心を込めて歌います。
本当に今までありがとう渋谷Wasted Time。また会おうぜ!!