『7月7日はポニーテールの日 by七夕SS』
「はぁ~…」
「なに辛気くさい溜め息吐いとんねん」
チラリと横目で睨み、また溜め息。
「オメーには分かんねーよ」
「分からんって…そんなん言うてみな分からんやろ!!」
「い~や、分かるんだよ。お前が服部平次である限りな!!」
そう言い放つと、新一はもう一度溜め息をつき机にうつ伏してしまった。
「そこまで言われて、はいそうですか。って諦めるアホおらんやろ。分かるか分からへんか分からんけど、言うてみんかい」
……ったく、この男ときたら。
なぜこの勘の良さがあの幼なじみに向けられないのか。そう思いながら、新一はようやく諦めた表情をして平次の興味津々な眼差しを受け止めるように身体ごと向き直った。
「…あのさ、オメー昨日なんの日だったか知ってるか?」
「なんやねんいきなり……昨日は確か、七夕やったやろ? 和葉が折り紙持って騒いどったし」
「そうなんだよ、蘭も何が楽しいのか大騒ぎしてた」
「でもそれがなんやっちゅうねん。女なんてそんなもんやろ」
…まぁ、それが可愛いんだけど。
2人はその言葉を口にはせずに、お互いの幼なじみを脳裏に浮かべた。
「…たしかにさ、女の子はそういう行事好きなんだろうけど。」
だけど…。
そう言うと、新一はどこか遠くを見ながら今までで一番大きな溜め息をついた。
「オレ、昨日ばかりは改めてオメーの偉大さに頭が上がらなかったんだよ」
「はぁ??」
7月7日。
毎年、蘭はそれはもう楽しげに笹飾りをつくる。それはいつもの光景で、側で見ている新一を温かい気持ちにしてくれた。
新一も短冊に何か書いてね。
と、頼まれるのもいつものこと。
星に見えるよう、笹を窓際にくくりつける作業を自分がこなすのもいつものこと。
「新一と七夕するの久しぶりだから、浴衣新しいの買っちゃった♪」
見て見て。そう言って目の前でクルリと回った蘭の殺人的な愛らしさときたら…。
コナンの時には苦しいだけだった蘭に対する恋心を素直に表現できる喜びをかみしめながら、新一は上目づかいで頬を染める蘭を優しく抱きしめたのだった。
そして、気づいた。
腕の中で大人しくしている蘭を見下ろすと、ちょうど目に飛び込んでくる…花が匂い立つような、白く華奢な“うなじ”が…。
(い…色っぽい…)
思わず、生つばを飲み込む。その音が彼女に聞こえやしないかと焦り、慌てて抱きしめていた腕をといた。
「新一?」
「あ、いや…その…なんだな。今日はやけに暑いな。ははは…」
情けないけど、まともに顔が見れなかった。
ついでに自分自身もどうなっているのか…。蘭に気づかれていないか心配で、思わず前屈みになってしまう。
ホント、ちょっと蒸し暑いわよね。雨降らなきゃいいけど。
そんな新一の葛藤に気づくこともなく、新一に背を向けると蘭は窓から空を見つめ祈るように胸元で手を組み合わせた。
艶やかな浴衣姿。
見慣れているはずなのに、普段さらさないうなじ…。
(うなじが、こんなに色っぽいなんて気がつかなかった)
そして、はたと思い出した。
今までそういう目で見たことなかったけれど…。
(和葉ちゃんも物凄く綺麗なうなじしてたよな)
あんなの毎日そばで見せつけられて、よく平静でいられるもんだよな、アイツ。
自分なら絶対耐えられない。
蘭のうなじをまともに見ることができず、横目でチラチラ確認しながら、新一は次に2人が大阪からやってきたとき、果たして冷静に対処できるか……己の理性に一抹の不安を覚えるのであった。
「ほんと、オメーは凄いって、心底そう思うよ」
見ると、改めて幼なじみのことを思い浮かべただろう。
そう言った新一へ返す言葉も見つからないまま、平次の顔は赤くなったり青くなったりしている。
きっと、信じられないけれど、この男は今新一に指摘されるまで幼なじみをそういう目で見たことがなかったのかも知れない。
新一はそんな平次に、相変わらず朴念仁だなぁ…と苦笑すると、これからが大変だよな。と、平次の自覚したがための苦悩を思い、自分のことのように深い溜め息をついたのだった。
***
〈後書き〉
和葉ちゃんってポニーテールがほんとよく似合ってる。
あのうなじをもし平次が意識しだしたら……もう冷静な君ではいられないよね。
*右目の腫れがますます酷くなってきました。明日病院に行ってきます。
…あと、日参してるyさまのブログで『るろ剣実写版』を知りました!
…あぁ、色々語りたい。
先月の“ケンカオ”月間の興奮がようやく治まったところだったのに(笑)
また今度ゆっくりここに熱く書き込みたいと思います。
yさま、また情報よろしくね♪