「そりゃ、アンタが悪い」
結婚して、初めてのケンカ。いや、知り合ってから初めてかもしれない。
しょうもない言い合いは、そりゃあ数えきれない程してきたけど。
ここまで真剣な、家を飛び出してしまうようなケンカは初めてで
アタシは、何がなんだか分からないほどパニックに陥りながら。親友であるアイちゃんの家に転がり込んだ。
……そしたら、あのセリフを言われた訳。
「ほら、はよ電話して謝ってまい」
「……いや」
「なにイジ張っとんの、自分が悪いって思っとんのやろ?」
「思ってるけど…思ってるけど、でも向こうも分からず屋やもん」
ふぅっ、とため息を付くアイちゃん。
「仕方ないなぁ…今晩だけやで?」そう言って、アタシにパジャマを渡した。
分かっとるんや……アタシが拗ねてるだけってことぐらい。
さっきから気にしてる携帯も、震える様子はまだないし。 探してくれてるなんて、期待するだけ無駄やってことも分かっとる。
所詮、アタシの行動パターンなんて、彼にはお見通しで…。たとえ今、彼が折れてきたとしても意地っ張りなアタシが言うこと聞かんことは、火を見るより明らか。
だから、静観してるんや。アタシよりいつも冷静で頭が切れる彼は。この状況を。
(……やから余計、悔しいんや)
でもね。
それでも向こうから声をかけて来て欲しい思うアタシは……。
やっぱりズルイ女なんやろうか。
ごめんね、アイちゃん。
明日は仕事帰り、押し掛けて来たりせえへんから。
ちゃんと家に帰るから。
やから、またアホなことしそうになったアタシに。優しくお説教してな。
次の日。
昨夜は涙で食べることが出来ず空腹な胃袋に、カフェオレを1杯無理やりおさめる。
胃を痛めないようにと、ミルクを多目にしてくれたアイちゃんの優しさが胸に染みた。
今夜は、ちゃんと謝るよ。
寝ないで考えたもん。
『ごめんね』『ごめんなさい』『アタシ、反省しとるから』
心の中で、何度も何度も繰り返しながら唱えてみる。
気が重いけど、もう限界やから。
彼とまたやって行けるよう今夜のシュミレーションを想像しながら、アタシは親友の家を後にした。
「おぅ……」
鳩が豆鉄砲食らった顔って、きっと今のアタシの顔のことだろう。
やって…目の前には、いるはずのない人が立っとるんやから。
「な、なんで…?」
さっきのシュミレーションも、もうすっかり何処かへ吹っ飛んでしもうた。
そんなアタシを見て、目の前の彼は声を殺し、何故か楽し気に笑った。
「もうおさまったんか? でも家飛び出すことないやろう。めっちゃムカつくやん。……せやけど、お前あんな気分で仕事行くのキツイやろ思てな。しゃーないから迎えに来たったわ」
朝日を浴びて、そんな言葉が彼の口からケロリと出た。
ちょっと……なんか余裕かましてるんちゃうん?
嬉しい気持ちと、無性に悔しい気持ちが入り交じり何か言おうとしたら、今度は少し赤くなった顔で、彼はこう話を続けた。
「オレもキツイしな」……って。
やっぱり、彼は1枚も2枚も上手やね。
悔しいけど、そう思った。
その後、スーツにバイクという彼の背に掴まり、スタバへ直行。
あんなに受け付けなかった食事も、今は嘘みたいに美味しく感じた。
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昨日、旦那と大ゲンカしました(汗)
この小説がフィクションなのか、ノンフィクションなのか……それは皆さんのご想像にお任せします(笑)
……やっぱり平和が1番やね♪