(6)
(懐かしなぁ…)
昔はワシもよく授業をサボり、ここで早メシ食ったり昼寝したりしたもんや。
…などと、つい感傷に耽りながら 平ちゃんに引っ張ってこられた『学校の屋上』
ワシは背を向ける平ちゃんと会話するのが嫌で、顔を上げることが出来ず黙って足元を見つめていた。
(細っこい足やのう……ちゃんと飯食うとんか、和葉は?)
とりあえず、そんなしょーもない事を考えてみる。
ガチャン…という音と、深い溜め息だけが響くこの空間で、平ちゃんは怒りを含んだような低い声音で静かに話しかけてきたんや。
「……なんで、今日はアイツら睨んどったんや?」
「……………」
「お前、いっつも気付かんくせに今日はなんやねん」
……よう見とるやないか、平ちゃん。 和葉に対する“あの視線”に気付くやなんて…。それって、自分も和葉をいつも見てる言うとるようなもんなんやで?解っとるんか?コイツは。 ……まぁ、解ってないやろなぁ……。
「それになんでオレにまで、そんなよそよそしい態度やねん。 ……ちょおこっち見てみいや」
そんなん言うたかて……見れるかぁっちゅうねん。
ていうか、平ちゃんて普段こんな偉そうにモノ言うとんのか?和葉に。
そんな平ちゃんにちょっとムカつきつつ、これ以上ややこしい事にならんようワシはひたすら黙秘を続けとった。でも、平ちゃんから伝わる熱が それを許さん言うとるみたいに思えてきたから…。
「……話は後で聞くから、とにかく試験受けに行こ……」
そう言ってチラリと顔を見上げた。
「…………」
「何そんな恐い顔しとんねん。……ア、アタシ、行くからね!」
アカン、マジで試験受けられへんようになるやんけ!
ワシは何か言いたげな平ちゃんを無視して、足早にそこを後にしようとしたんや。
でも……。
「待てや、和葉っ!!」
平ちゃんは、そう叫ぶと痛いぐらいワシの腕を掴んだ。
振り向くと、切ないような悲しげな目。
「へ、平ちゃ…ん?」
「和葉……お前、もしかして……」
(和葉やないことバレたんか?!)
一瞬そう思たけど、次に続く平ちゃんの言葉に、ワシは訳が分からず思考停止状態に陥ってしもうたんや……。
「昨日のアレ、やっぱ嫌やったんか……?」
*****
一方、その頃 お父ちゃんになった和葉はというと……。
「あれ、おやっさん? 今日は車やないんですか?」
「お、おう…。ちょお気分転換でな…ハハ…」
府警の入り口で部下の1人にそう声をかけられる。
それを適当に誤魔化して、アタシはいつもお父ちゃんがいる部屋へ チョコチョコと歩みを進めた。
でも……お父ちゃん、めっちゃ身体疲れてるみたいやなぁ。なんやアチコチ重いんやもん。 今度肩揉みでもしたろうかなぁ。
そんな事を考えながら、上層階に向かうエレベーターに乗り込んだ。
目的の階のボタンに手をやろうとした時、ようやくアタシはある疑問が頭を過り、その場で唸るよう考え込んでしまったんや。
(……あれ? アタシ……何か大事なこと忘れとるような気が……)
何やろう?
何か大事なことあったはずやのに。
その事を考えまくってて、気ぃ付いたらお父ちゃんと入れ替わっとって……アタシ……。
そうやってうんうん唸っとると、エレベーターが到着し扉が開く。
何か引っ掛かりを感じながらも、アタシは『捜査一課』へと向かい軽い足取りで歩いて行った。
(続く)
…………………
書けば書くほど長くなり困ってきている作者です(苦笑)
おかしいなぁ? 想像してるのは短い話なのに。 簡潔に書けないのは修行が足りないせいですね。 精進せねば。
もう暫くダラダラ続きますので…。
おやっさんファンの皆様(笑) お付き合いよろしくです♪