複雑な彼 | 映画プログレ桜田淳子

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オシャレでカッコイイ男性客室乗務員・宮城譲二に心ときめかす冴子だったが、宮城は日本人のみならずイギリス人(?)やインド人とも浮き名を流してきたモテ男クン。しかも、井戸掘り・ボクサー・バーテン・新聞社のカメラマンと多彩な経歴を持つ上に、現在執行猶予中。さらには、怪しさプンプンの男から何やらヤバそうな仕事を持ちかけられている “複雑な彼” だった。

 

……という、若かりし日の安部譲二氏(!)をモデルにした三島由紀夫による同名小説の田宮二郎(!)主演による映画化作品。

 

 

原作未読だが、さほど筋は変わらないようだ。まあ、安部氏の人生が破天荒であったであろうことは想像に難くないとして、こういうオトコが三島にとっての理想だったのだろうか。確かにそういう面はあったのだろうが、映画を観る限り、安部氏から話を聞いた三島が「おもろいネタみっけ」と一気に書き上げた娯楽小説の趣。

 

それを映像化しているワケだから当然ストーリーも明朗快活に破天荒。さらに、原作(あるいはモデルとなった人物)を一気に男前にしてしまった為に、万華鏡のように変化する主人公の様々な【顔】を繋ぎ止めていたであろう【いわくありげな怪しさ】(原作未読だが、たぶん)が消滅し、それぞれの【顔】が何だか糸の切れた風船みたいになって軽やかかつてんでバラバラに空中浮遊。呆気にとられたまま話が進む。そして最後の最後に「何じゃそりゃ!?」の大転換。

 

サンフランシスコやリオデジャネイロでのロケを敢行するなど、お金もかかっていそうなだけに、なおさら資格じゅうぶんの珍品であった。