レディ・ジョーカー (文庫)/高村薫 | 読書感想文的書評

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書評などと言えるものではございませぬ。

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レディ・ジョーカー〈中〉 (新潮文庫)/高村 薫
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レディ・ジョーカー〈下〉 (新潮文庫)/高村 薫
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単行本を買う勇気ってのはなかなか出ないもので、ちょっとした有名作品なら少し待って文庫でいいか、で済むのですけどね。


高村氏は違うのですよ。


文庫化にあたって、ものすんごく改稿するのです。


あまりに書き加えるからタイトルまで変わってしまうものまであるほど。



そしてこの『レディ・ジョーカー』。


初版は1997年。


文庫化2010年。


もうこれだけで高村氏のストイックぶりが感じられるのです。



僕は生半可な読者なので、とりあえず売れっ子の作品なんか読んでつまんない思いをしょっちゅうするわけで。


特に最近のミステリーなんか読むと、よくできたストーリーなのに犯行の動機や背景がふやふやだったり、中途半端な終わり方で「あとは読者の想像にお任せします」みたいな感じだったり、がっかりすることが多いんですな。


そこで高村氏の作品のすごいところは妥協を感じることがない徹底的なストイックさ。



まず事件が起こる前に、それぞれの登場人物の徹底的な心理描写、犯人たちの犯行に及ぶ動機、背景などですでに並みの小説1冊分くらい。


ストーリーの元となっているのは誰もが知る凶悪かつ未解決のグリコ・森永事件。(知らん人はウィキペディアで)


ストーリーだけならそんなに長い物語ではないんだけど、そこに事件をめぐる男たちの圧倒的な心理描写がずっしり肉付けされているわけなのです。


犯人たち、被害者たち、それを追う刑事たち、新聞記者たち、検事、、、


さまざまな男たちの思いがこの超大作を作り上げているのです。


そこに女子供の入る隙間は皆無。



この硬派な男汁をすすり、皆で語ろうではないか。


刮目セヨ!