イノベーションはオーストリア生まれの経済学者シュンペーターが
経済発展の理論を明らかにする中で示した言葉とされる。イノベー
ションは新結合だという解説も見かける。

科学技術イノベーション政策アナリストの小林信一氏は、岩波書店の
雑誌「科学」2018年4月号に掲載した「シュンペーター,イノベーシ
ョン,技術革新」という論文の中で、イノベーションという言葉がど
う生まれ、どう使われてきたかについて解説している。

それによると、1911年に発刊されたドイツ語の書物「経済発展論」の
中で、シュンペーターは「neuen Kombinationen」(新結合)という
言葉を使ったのが始まりとのこと。

この言葉は1926年に出した同名の書籍の中で、
・新製品
・新生産方式
・新販路
・新材料
・新組織
といった説明が追加され、新結合の意味の明確化がはかられたという。

さらに、シュンペーターがアメリカに移ってから出した英語の書物で
「新結合(new combination)の実現がイノベーション」とし、
「innovation」という言葉の意味を確立したのだそうだ。

小林氏の論文によると、この英語をドイツ語にするとき、革新の意味
のドイツ語「Neuerungen」ではなく、ドイツ語では外来語となる
「innovation」をそのまま使ったが日本語訳では、innovationを
「革新」と訳したとのこと。

前述のようにイノベーションは新生産方式や新組織も含む広い意味を
含む。
日本では、「技術革新(イノベーション)」といった表現から、イノ
ベーションは技術革新を意味するという定義を狭めた理解が広がって
しまったという。