レオナルド・ダ・ビンチの絵画はとても少なく希少だが、なかでもモナリザ級のお宝絵画がクラコフ国立美術館にある。

 

ポーランド貴族の末裔の個人所蔵だったこの絵画をポーランド政府が購入し、2017年からクラコフ国立美術館で展示をしている。
今後は国から門外不出の方針となっており、クラコフに行かない限り見られない逸品中の逸品。
 
 
この絵のためだけに恭しく特別室ができていて、実物は写真撮影不可のため、その手前にフォトスペースもある。痒いところに手が届くサービス。
写真撮影用のレプリカ版で、貴婦人と記念撮影ができる。
 

さほど並びもせずに、パラパラと数人の人しかいないスペースで静かにゆっくり鑑賞できる。
絵画鑑賞の環境としてはこれ以上のものはない。
ちなみに20ズロチ(約600円)。有難い。合掌。
 
 
この絵を見たときの私の驚きは、なんといっても白貂を抱く貴婦人の手の甲の描写の精緻さと美しさ。さすが、あの時代に人体解剖を行なって、皮膚の下に何があるのかに詳しかったレオナルド様のお仕事だ。首の筋肉と鎖骨のくっつくところの立体感も繊細でリアリティがあって見ていて飽きない。
白貂の顔の筋肉も怖いくらい本物っぽくて、レオナルド様はこの絵のために白貂も解剖したんじゃないかと思った。
 
モデルといわれているイタリア貴族令嬢チェチーリアはこの絵の当時17歳で、ミラノの最有力者ルドヴィーコのお気に入りの愛妾であった。とっても綺麗で聡明で芸術的にも優れた女性だったらしい。ルドヴィーコは、自身のお抱え総合芸術プロデューサーだったレオナルド・ダ・ヴィンチに、彼女が人生で一番美しい時の肖像画を描かせた。
その輝く一瞬の肖像画は、こうして500年も生き続けている。
 
また、この絵は流転を繰り返しているのもミステリアスで、1939年にはナチスに没収されて、戦争中はナチス高官の部屋を飾っていたそうだ。
絵を巡る歴史もロマンたっぷり。
 
チェチーリアはこの絵を気に入っていて生涯持っていたそう。
わかるよ。
知らない女性を描いた絵でもこれだけ不思議な魅力にあふれている絵なのに、これが自分の肖像画だったらどんな気持ちになるんだろう。しかも、当時からみんながすごい天才といっていたレオナルド様に描いてもらった絵。
家に客人も絶えなかっただろう。
毎日この絵の中の自分を見るたびに、きっと柔らかい気持ちになったんだろうなぁ。
 
ずっと見ていたい絵。
そんな絵でした。