確定診断を至って普通に聞き終えて
3人で診察室を後にして、待合室にある
椅子に腰掛けた。

重たい空気はなく、一緒にいた看護師さんが

一番安堵していたかもしれない。

他愛ない話しをして和やかな雰囲気だった
ところに妹がまた例の話をし出した。

「あんたにとっては聞きたくない話かもしれないけどさぁ、何回も言うけど片付けとかちゃんとしておいてよ!大変なのはあたしなんだからね。」


たった今、主治医から話を聞き終えたばかりの

病院でしかも看護師さんも一緒にいる中で

そんな話をし始めた事に腹が立った。

「またその話し?この間からLINEスルーしてるの

気が付いてないの?」

「やっぱり!なかなか既読にならないからそうじゃないかと思ってたんだよね」

「あのね、私はたった今確定診断を受けたばっかりだよ。治療だってまだしてない!

これから始まるんだよ!先の事なんて誰にも

わからないけどまだ何にもしてないんだよ。

それなのにあんたが話すのは私の体の心配よりも

私が死んだ後の遺品の整理の話ばっかり!

おまけに弟も5年生存率送ってくるとか…

もうね、あんたと弟で何を話してもいいけど

逐一私に報告してくれなくていいから!

これから生きる為に治療していこうとしてるのに

そんな希望も失くすような萎える話ばっかり

されたら治療の邪魔になるから連絡もしなくて

いいよ。」


「遺品整理とかはあんたに言われなくても私が

旦那の事で辛い思いしてるから誰よりも一番

よくわかってるし、その時がきたら迷惑かけない

ようにしておくつもりでいるから心配はいらないから」

機関銃のようにこれまで思っていた事を
ぶちまけた。

実際、これから治療にすべてをかける中で
希望の欠片もない話が一番マイナスになる
常にプラス志向で治療に都合よく考えて
結果に結びつけたい私は必死だった。

だからこそ妹の死んだ後の話は黙って聞ける

話ではなかったし、今の私にはまだ必要のない

話だった。

もし、自分が私と同じ立場だとしたら

こんな話をされたらどう思うんだろう…

普通の話として受け入れて

何事もなかったかのように振舞うんだろうか…

 

育った環境は同じでも大人になってからの

生き様によって考え方や感じ方は変わるものだし

元々の性格も関係してくるんだろうけど…

 

妹は久々にイラついてる私に「ごめんね」

と一言謝ってくれた。

院内で声をちょっぴり荒げてしまった事に

私も反省した。

 

隣で勃発した姉妹の言い争いに巻き込まれた

1番の被害者はどうする事もできずに

呆然としていた看護師さんだった。