12月29日 世の中、年の瀬も押し迫り、年越しの準備に忙しい時期です。私の仕事も例年通りこの日から正月休みに入っていました。

旦那の方は本来はこの日が仕事納めになるのですが、診察の予約が入っている為、1日早くお休みに入りました。

 

朝、仕事のある娘を旦那が車で職場まで送って行き、予約時間の

9時30分に間に合うように家を出ました。

運転をしていたのは私で、旦那は助手席に乗り込みました。

 

クリスマスに旦那からがんの事を打ち明けられて、何が変わったのか

・・・。いつもと変わらぬ様子で仕事に出かけて、いつもと同じように

帰ってきます。ただ1つ違うのは「がん」になってしまったという事。

意識しないわけにはいかない状況で、やはりお互いとても気を

張った状態で今日まで過ごしてきました。少しの変化でも気にして

体を気遣い、体調優先でビクビクしながら生活してきたように

思います。

 

病院へ着いて、受付を済ませ、消化器科へ向かいました。

年末最後の診察日と重なり、病院は人で溢れていました。

 

病院へ来る前に旦那がこんな事を言い出しました。

 

「今日、病院へ行って先生の話を聞いて納得いかなかったら

セカンドオピニオンしようと思ってる。でも、その前にお母さんが

先生を見てどう思うか、聞かせて。」

「いいけど・・・なんで?」

「いや、最初に診察してもらった時、なんか俺と合わない気がしたし、

この先生で大丈夫か?って思っちゃったからさ・・・」

「そうなんだ・・・わかったよ。そういうのは私の方が客観的に見れる

かもしれないしね。」

 

セカンドオピニオンと信頼できる医師なのか・・・それを私に判断してほしい。それは頼まれなくてもしますとも・・・しかしこの日の私は

旦那以上に朝から緊張していたので、客観的な判断ができる自信は

ありませんでした。待合で待ってる時間がとてつもなく長く感じられ、

逃げ出してしまいたい気持ちで一杯でした。

 

看護師さんに名前を呼ばれ返事をすると

「今日、ご家族の方は?」

「はい。私です。」

「あっ!奥様ですか?もう少ししたら番号でますのでお待ち下さいね。」そう言われて、ほどなく電光掲示板に予約番号が表示され、私達は

診察室の中へ入って行きました。

 

診察室に入ると、椅子に座った先生が私の姿を見て

「奥さんですか?」

「はい。」

「ここではあれなんで、ちょっと場所を変えてお話しましょう。」

 

そう言うと側にいた看護師さんがこちらへどうぞ・・・と言って診察室の中から違う部屋に案内してくれて、すぐに先生との話が始まりました。

 

「今日は宜しくお願いします。」

「ご主人からお話は・・・聞かれましたか?」

「はい。」

そう言うと、先生は先日撮ったCT画像だし、私達を真っ直ぐ見て

「病名は胃がんです。正式には胃体部がんで、大きさ的にはぜんぜん

大きいものではありません。胃がん自体は切れさえすればどうにでも

なる感じですが・・・問題はこっちです・・・」

 

そう言って画像を切り替え、写っていたのは肝臓のCT画像でした。

確かに、胃がんはクレーターのようになって周りが隆起した状態になっていましたが、旦那が言うようにグロいとかそんな感じはしませんでした。ネットなどで見ていたそれとは違う気がして、大きさも想像していた

よりも小さく感じましたが、次の画像を見た瞬間、はっとしてしまいました。これって肝臓だよね・・・どれががんなんだ?・・・そう思っていると

先生が画像を指しながら

 

「これは肝臓のCT画像です。この黒いのががんです。」

と言った先には黒い大小の点が無数に写し出されていました。

どれががんとかそういう問題ではなく、そこに写っている黒いもの

すべてががんだったのです。この画像を目にするまでわりと冷静に

いられたと思いますが、この画像を見せられた瞬間から私の体は

凍りつき、手が震え、目から涙が溢れていました。手の震えを

止めようと旦那の手を握っていました。この先の話を聞くのが怖い、

聞きたくない、帰りたい、なかったことにしたい・・・そう思いました。

でもなかったことにはできない現実です。

 

あの日、肝臓にも転移していると聞いてから、私なりに肝臓に転移

したらどうなるのかをネットで色々と調べていました。

すい臓と同じで物言わぬ臓器。症状が出始めてから見つかると

ほぼステージ4に移行していることが多く、ここまでくると切除は

できない状態。今、私が見ている画像はまさしくそれを物語って

いる状態のもので、旦那のがんはそこまで進行していたのです。

そして、ネットで調べて分かったこと・・・

 

春先の腕の痒みは肝臓からくる痒みの可能性が高いこと。

お酒の量が飲めなくなったのは弱くなったのではなく、肝機能が

低下し、アルコールを分解できなくなっていたから。

頻繁にでるようになっていた鼻血も、長引く風邪のような症状も、

異常な眠気とだるさ・・・すべてが肝臓に繋がっていた事を知りました。

こんなにたくさんの症状が出ていたのに、体はサインを送っていたのに

気付いてあげられなかった事、見過ごしてしまった事を調べながら

後悔していました。

 

先生はリンパ節への転移も指摘していました。そして転移に至るまでの流れの説明を丁寧にしてくれ、血行性の転移で胃がんの転移は

肝臓に転移する事が非常に多い事、そして肝臓のがんだけども

原発は胃がんからの転移なので、多発性肝転移ということになります

・・・と私と旦那に教えてくれました。しかし、とめどなく流れる涙と嗚咽で返事ができず、旦那の手をギュッと握り締めてこれ以上崩れない

ようにするだけで精一杯の私でした。旦那は私が泣き崩れているので

手を握って私を支えながら、自分の置かれている状況を確認している

そんな感じがしました。

 

 

 

がんの兆候が現れだしてから、実際に診断されるまでの間に

体にでていた症状。どれも単体で現れると見逃しがちな症状ばかりです。鼻血にいたっては、旦那はがんになる以前からよく鼻血をだしていて、過去に焼いています。だからなおさらいつもの事で終ってしまって

いました。今だから、がんと言われたから結びついたけれども

物言わぬ臓器と言われているように、普通でいたら気付けない事が

多いのかもしれません。こんな症状がある方がいらっしゃればすぐに

病院へ行って、検査してみて下さい。なんでもなければそれに越した事はないのですから・・・

 

がんの兆候は次で最終にしようと思います。側で見ていたのに

気付いてあげることができなかった・・・ネットで調べることだって

できたはずなのに。この時気付いていたら、もう少し旦那と一緒に

いられたかも・・・と思うと後悔しかありません。