12月24日 家の前に止めた車の中で、私は旦那と話をしていました。私が旦那のがんを知るきっかけとなった前日の動画の話をし、

先日の病院での血液検査の結果もこの目で確認した事などを

話終えると、旦那が深く息を吐いてから

 

「そっか・・・そこまで知ってるなら・・・ごめん。がんになった。

そして余命宣告もされた・・・春までもたない・・・。」

 

やっと旦那の口から本当の事が聞く事ができましたが、

がん・・・と思ってはいたものの、まさか余命宣告までされているとは

思わず、予想していなかった告白に動揺を隠す事ができません。

 

「えっ!余命宣告ってどういう事?何のがん?手術するんでしょ?

手術できるんだよね?」

「ごめん。手術はできない。胃がんだけど肝臓とリンパに転移してるから・・・。」

「嘘だよね・・・嘘でしょ?嘘って言ってよ!」

「お母さん、嘘じゃない・・・。ごめんな。」

 

大粒の涙が次から次へと溢れる中、私は涙を拭うことはせず、

旦那に抱きついて2人で泣いて、嗚咽交じりで泣きながら今日まで

の旦那を思っていました。

 

12月19日胃カメラの検査をしに行き、胃潰瘍と言われ、紹介状を

貰って帰って来た日です。旦那も胃潰瘍と言われたのに大きい病院へ

行くように言われて府に落ちなかったようで、まさか・・・と思って

いたようでした。でも、胃潰瘍と言われ、この医院では治療が難しい

から紹介された・・・と思っていたようでした。

12月22日朝から紹介された病院へ行き、長い検査時間を終えて

主治医となる先生から告げられた病名は

 

胃体部がん・リンパ節・多発性肝転移あり。余命、無治療で3ヶ月・

治療をして10ヶ月~12ヶ月。

 

主治医となる先生からがんと診断され、余命宣告をされた旦那は

「えっ!俺が?えっ!先生、俺?」と聞きなおしたそうです。

診察が終わり、車に乗り込んでから家に辿り着くまで、どうやって

帰ってきたのか・・・正直覚えていないと後で聞かされました。

旦那は1人で病院へ行って、1人でがんと診断され、余命宣告まで

されて帰ってきた・・・いったいどんな気持ちで診断を聞き、どんな

気持ちで家路に着き、どんな気持ちで今日まで過ごしてきたのか・・・

そんな事を思うと、旦那が自分の胸の内に秘めた思いを家族に

悟られまいとして、普通を装っていた事に私は今まで感じた事のない

苦しさと、切ない気持ちと、悲しみと、愛しさを感じました。

眼の前にいる旦那をギュッと抱きしめ

 

「1人で辛かったね。よく話してくれたね。ありがとね。でも、もう

1人で悩んだりしないで!」

 

今日まで本当に辛かったと思います。本当は打ち明けたい

気持ちで一杯だっただろう。でも、私の気持ちを考えると言い出すことが出来なかったのだと思います。心配をかけまいとした旦那の優しさ

が身にしみました。今日、この時まで旦那の頭の中はがんと診断

され、その事しかなかったはず・・・不安な気持ちは計り知れない程

だったと思います。もっと早くに気付いてあげられたら、なぜ気付かなかったのか・・・私の中には後悔の2文字が浮かんでいました。

 

「気付いてあげられなくてごめんね。側にいたのに・・・気付かなかった

。がんだってわからなかった・・・」

「お母さんのせいじゃないよ。自分の責任。もっと早くに検査受けとけばよかった。ほんとにごめん。」

 

旦那はがんと診断されてから、信じる事ができず、これからどうなるのか、これからどうしていけばいいのか、がんを受け入れられずにいる事を話してくれました。その後、目一杯泣いて今後について話ました。

 

「12月29日にもう1度、病院へ行くことになってて、そこで今後どう

するのか話をする事になってる。どうする?一緒に行く?」

「もちろん。行く。」

「CTとかも見ると思うけど、びっくりしないでよ!」

「それは・・・わからない・・・」

 

あまり長く車にいると娘が変に思うから・・・と泣き顔が泣き顔に見えなくなるまで待って、家に入りました。

 

この日はクリスマス。他の家では家族で「メリークリスマス!」と

言って楽しい1日を過ごしているのであろう。しかし、2017年の

クリスマスは私にとって、最悪の、そして家族で祝う最後のクリスマス

になるかもしれない・・・。がんと知ったことで不安しかない中、

旦那たっての希望で、思い出に残る楽しいクリスマスにしたい、

来年がなければ今年が最後かもしれない。だから泣かないで過ごそう

と。

 

急いで家中を飾り付けて、旦那のリクエストでメインにステーキと

ワインを用意して、みんなでサンタになって、私は一生懸命笑顔を

作っていました。旦那と真実を知らない娘の為に・・・

もちろん、私だけではありません。旦那も悲しい顔はせず笑っていました。パーティーも終盤になり、私から数日前に用意したプレゼントを

娘と旦那に渡しました。娘にはコスメセットをポーチにいれて・・・。

旦那には欲しがっていたダウンのジャケットを・・・。

娘は初めてのメイク用品に無邪気に喜んでいましたが、旦那は

ダウンジャケットを手にちょっと着てみる・・・と言って奥の部屋に

引っ込んでしまいました。出てこない・・・そっと様子を見に行くと

タオルで口元を押さえながら、泣き声を殺しながら泣いていました。

その姿を見て、私も泣きそうになりましたが、こらえて声をかけずに

戻りました。そして、部屋から戻った旦那が

 

「お母さん、ありがとう!俺大切にする。そして、来年もこれ着られる

ように頑張るから!でも、ごめん。俺、お母さんにプレゼント買ってないや・・・」

 

そう言った旦那の顔は泣いて目が赤くなっていたが、顔は笑っていました。この日から私はいつでも写真や動画が撮れるようにと、デジカメを

すぐ手の届く所に置くようになり、この日もたくさんの写真と動画を

残しました。

 

楽しい思い出となったクリスマス。しかし、皆が寝静まった後、

私は1人で涙を流しながらクリスマスの後片付けをしました。

こんなに悲しいクリスマスってあるんだろうか・・・

旦那と同じで、私自身もがんになったという事実を受け入れる事が

できていなかったので、1人になると耐え難い不安が押し寄せ、

ただただ泣くしかありませんでした。

 

12月29日 その日がやってきました・・・旦那と2人緊張しながら

病院へと向かい、主治医となる先生から話を聞く事になります。