父は手紙を日本にいる母の友達に転送した。母の友達は事情を説明する手紙をドイツの母に書き送った。
母はロサンゼルスの父に、
「わざわざ手紙を転送してくださってありがとうございます」
とお礼のハガキを出した。父もそれにハガキで答えた。
母の目を引いたのは、太陽輝く青空の下でサーフィンをするサンタクロースの絵柄だった。ハガキを受け取った時のボンは厳寒の真冬で、最高気温は五度前後だった。
こうしてアメリカと西ドイツ間の文通が始まった。
「一度アメリカに来てみませんか」
やり取りが進んでいく中で父が提案した。それに対して母はドイツの大学で勉強したいことを伝え、断った。
「アメリカの大学も悪くないですよ。学費の件でしたら心配ないですよ」
父はなおも押した。母の心が少し動いた。
結局母は父に口説かれる形でアメリカ行きを決め、それどころか両親はそのまま結婚をしてしまった。
両親の結婚式。左から母(25歳)、神父、目つぶる父(30歳)(ロサンゼルス 1969年)