こういう環境での仕事をくり返すうちに、ぼくは段々と寒さに強い体になっていった。
一度、外気温も少しずつ下がってきたある秋の日、特に深く考えることなくティーシャツで出かけた時があった。
だが、街ゆく人がみな長袖で寒そうに腕組みをしているのを見て、ようやく自分が寒さに鈍感になっていることに気がついた。
ソロモンという熱帯での暮らしもあり、こうしてぼくはいつの間にか寒さにも暑さにも対応できる肉体になっていたようだ。
最初よりも一時間半早く出勤し、他の人よりも多くの仕事量を割り当てられ、休憩する間もなく冷蔵室に三時間、冷凍室に二十分こもる状況は限りなくブラックな環境でなんだか罰ゲームのようであった。
世間の底辺にいることは間違いなかった。
蓄冷剤(2017年)