「まあ、それもそうだが、ひと言にドルフィン・スイムと言っても、これがなかなか簡単なことではないんだ。相手は小笠原やハワイのイルカと違って人と泳いだことはないしね」
ぼくは答えた。
「えっ、でもそんなこと言ってたら、いつまで経ってもドルフィンスイムなんてできないんじゃないですか」
「うん、そうならないとも限らないが、以前に比べると群れがうちの前を通る回数は頻繁になってきているよ。バンガローのまん前に姿を見せることもあるし、人間とイルカの距離は確実に縮まっていると思うよ」
「えっ、でもそれって“気のせい”だったらどうするんですか」
シュクはなおもひつこく絡んできたが、問題は、彼女にはまったくそういう意識がなかったことだった。
カニ食べるぼくと六男ベリー(2001年)