或時或処で聞いた話。

 

 本当に、武道オタクは困ったもので、日本で一番強い剣術はなんだろうか、という埒もない、全く意味を持たない武術談義の中で鹿児島出身の輩が主張します。

「そりゃ、何と言っても”示現流”。これは譲れない。」

 

 柳生新陰流、天然理心流、香取神刀流、北辰一刀流、はては飛天御剣流・・・日本国中に数多ある剣術の中でも、薩摩示現流はひとつ頭抜けているらしい。今回はこの伝聞話です。(だから、誤解があっても僕のせいじゃない、と言い訳してます。)

 

 示現流の稽古は、蜻蛉の構えからの袈裟切りのみの受太刀無し。樫や柚子などの固い木刀で、只ひたすらに左右の袈裟切りを繰り返す。剣先よりも鍔本を使って、スピードと威力を高めるためにひたすら袈裟切り、袈裟切り。基本的に米が取れない貧乏藩なので、切味鋭い名刀などは滅多になく、凡刀を使って、まさに叩っ切る叩っ殺す剣術。初太刀の袈裟切りに全てを賭け、躱されたら死ぬのみの覚悟を鍛える。

 

 こんな連中が集団で、天に刀をおったてて、突撃の号令と共に

「キェ〜〜。」

と猿叫しながら100mでも300mでも全力疾走で向かってきて、

「チェスト!!」

との気合とともに剣を振り下ろす。外れたら死ぬ。こりゃ怖いですよね。確かにこの集団、この刀法に勝るものなし。

 

 鹿児島市内の天文館にある「示現流兵法所史料館」では、予約をすればビジターにも体験稽古をつけてくれます。棺を蓋うまでに、一度体験してみたいと思っています。

                                 怱々