●西洋医学が解明した「痛み」が治せる漢方 @井齋偉矢 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

前回は疎経活血湯のあまりの即効きに
興奮しっ放しだったが、
今回はまず冷静に漢方の歴史から。。


漢方医学の起源は、おそらく古代インドの
アーユルヴェーダ。薬草を使う治療法だ。
中国に伝わると、気の遠くなるような年月を
かけて試行錯誤がなされ、AD1~2世紀に
「神農本草経」で薬となる植物が示される。


さらに漢方の特長である、多成分混合への
臨床研究も2~300年に亘り重ねられ
現代に伝わるマニュアル「傷寒論」が
出来上がる。西暦200年、後漢末のこと。

つまりこの時点で、今で言う「治験」は
とうに済んでいる。膨大なデータの結集。





この1800年前の処方は、なんと今でも
そのまま使われている。
古代の遺物、、と見せかけて実はコレが
現代薬より近未来的だったりするのよね。。


西洋薬の主成分は基本1種類、と決まってる
けど、漢方薬は少量超多成分の組合せ。
例えばこむら返りを5分で治す芍薬甘草湯は
芍薬も甘草も、単体でそんな効能は無く
配合率が違ってもダメ。  不思議だわ。


全くどーやって発見したもんだか、、( °_° )
・・という複雑怪奇なレシピの数々。。
現代科学で解明できないどころか
ピラミッドを現役で使ってるようなもんで
どう考えてもウルトラ級の世界遺産でしょ。
傷寒とはチフスのような悪性感染症のこと。
漢方薬とは不老長寿の仙薬ではなく
最初から救命救急医療です。ここ大事。




これが日本に入って来たのは5、6世紀頃。
で、何処が日本独自の漢方なのか??
というと「エキス剤」の発明なんである。


つまり漢方薬のインスタントコーヒーの
ようなもので、煎じる手間なく
均一な品質の製剤を大量に生産、
顆粒や錠剤、カプセルに作りかえる !
第一号は1957年小太郎製薬の販売だった。


この技術のお陰で携帯、長期保存可能、
安定した品質を提供できるようになり
現在では18社が製造する148処方が
健康保険適用で病院処方され
私達も薬局で手軽に買えるわけ。


これぞアイデアと技術による異文化融合!
アンパン、カレー、ラーメンに並び
世界に誇れる日本文化遺産。   ダー!!

小太郎漢方製薬株式会社HPより




中国、韓国では伝統薬を処方できる免許と、
西洋薬の医師免許は別なんだって。
漢方薬は昔ながらの手法で、患者ごとに
違う生薬を組み合せたりするんだけど、
成分が一定の日本製エキス剤は、漢方薬を
大病院の手術室で使用する事も可能にした。


今や脳神経外科で、脳浮腫の治療に
五苓散を使うのは常識。脳細胞のむくみを
ピンポイントに除いてしまう。
術後の腸閉塞対策にはツムラの大建中湯。
これはアメリカでも認められ、
メカニズムも具体的に検証されている。


ややこしい東洋思想は置いといて
現実の効能だけを見れば、漢方薬は
西洋薬の弱点を全て補う理想の女房。
東西両医療を保険で同時に受けられるのは
日本だけなのに、積極的に利用しないのは
どう考えても  MOTTAINAIのだ。




大いに魅力的なのは「痛み」の治療。

西洋薬の抗炎症剤は2種類しかなく
長期間使用すると免疫力が下がり
非ステロイド系の痛み止めロキソニンは
10日以上飲み続けると脳梗塞や心筋炎の
リスクが高まってしまう。。


しかし!  これこそ漢方の得意分野。
痛みは全て部位別に対処しちゃいます!

歯痛は立効散。化膿してれば排膿散之湯。
咽頭痛は桔梗石膏、肩関節は二朮湯。
ぎっくり腰は芍薬甘草湯、
よくある変形性膝関節症に至っては
色白ぼっちゃりおばさん系なら防已黄耆湯、
色黒筋肉質おじさん系は越婢加朮湯、、
という、まさに「心身一如」のキメ細かさ。

最近増えてる帯状疱疹だって
症状の段階別に都度、薬を変えて対応する。
当意即妙、至れり尽くせり。
なんとデキる子じゃ〜


免疫システムについては「はたらく細胞」
がチョーわかりやすい。

漢方薬は免疫の司令塔・樹状細胞さんの
感度を上げてくれる。





なるほどなー。と思うのは
西洋薬は病原菌を強力に叩くけど
漢方は敵と戦うわけじゃない、、てこと。


漢方は私達の身体に直接、語りかける。
炎症を鎮め、体内水分を調節し、
免疫を上げ、逆に過度な免疫反応は抑え、、
微細血管を活性化し、傷ついた細胞が修復
できるよう、体全体の機能回復を促す。
これ全部、西洋薬にはできないことよ。
漢方姉さん、なんて優しいの〜!?!






そもそも病原菌に接しても心身共に健康なら
病気にはならず、何らかバランスが
崩れている時、病は知らず侵入してくる。

我思う故に我あり、とは体と心を分けて
しまったデカルトの「心身二元論」だが
二千年前の中国の人は身体と精神が一体で
あることをちゃんと解っていて、
漢方薬は初めから精神面も含めた
全体のシステム異常に対応するよう
デザインされているのだ。    尊い!


その辺に生えている植物たちの
小さい力を集めて集めて
和を以て、和を以て、、、
鰯の群れの如くしなやかに
大難を乗り越えるのですよ。

神秘的ですねぇ。。

٩(๑❛ᴗ❛๑)۶