日露戦争の最中だ。
日本に古くからあった・・と言われる
「穢多・非人」の身分差別問題を扱っている。
そっか、破戒は「破壊」じゃなく、戒を破る。
「穢多の身分を隠せ!」 という
父親からの強~い戒めを破る主人公。
それが「破戒」なのかー。。
穢多非人、は鎌倉時代には既に存在し、
屠殺、動物の皮を剥いでなめす、草履作り
など、穢れの多い仕事をする。
その身分は代々変わらず、穢多の子は穢多。
どこまで行っても人に非ず。。
普通の人間とは見なされない運命なのだ。
明治4年、四民平等の世になると
平民の仲間入りを許されるが、今度は
「新平民」と言われ、根強い差別は続く。
あいつは「新平民」だ、と知れると
宿を追い出され、後には塩をまかれ、
火打ち石で清められたり。。
指四本サインで、奴は四足か?・・と噂。。
自分の生活する周囲に穢多がいる??
なんて、考えるだけでもぞっとする!!
おぞましく、汚らわしい事なのだ。
なんだかなぁ。。
とはいっても、皮革加工は重要産業。
江戸末期には代々、弾左衛門と称する
穢多頭が権勢を張ったりもした。
医師・松本良順が穢多の身分解放に尽力した
こと、●胡蝶の夢 に書いてあったっけ。
でも、「破戒」の明治、大正時代はおろか、
昭和~戦後を過ぎて、私が子供の頃も
「部落」なる怪しげな存在は、あったし、
●水上勉「良寛」 では曹洞宗に現代も続く
穢多の差別戒名がある、と言ってた。
穢多、部落民、は部落民解放運動の
「同胞融和」から「同和」が行政用語となり、
今も「同和問題」などと言われているんだ。
「破戒」は日本に初めてリアリズム文学を
確立した、と言われるようだけど、
藤村は身分差別問題に向き合った訳でなく
自分自身の苦悩を、穢多の主人公に
仮託しただけ、、みたい。
その証拠に、結末でも解決は示されず、
「穢多」の言葉を自ら避けるように、
第二版からはマイルドな「部落民」という
言い方に変えてしまうのだ。
解説者はそんな藤村の姿勢を不満に思いつつ
読者は絶対、この第一版を読むべきだ、と。