んだけど、これ童話?? そんなバナナ!
夜空を舞い、動物がしゃべる。不思議かつ
キテレツ極まる情景は、そりゃ楽しいよ。
♪シュッボオンって首を切られちゃうぞ。
♪カエルがチクチクチクチク汗をかく。
♪モズが音譜をばらばらにして、
振りまいたように飛んでくる。。
ファンタジーでリズミカルな表現の数々!
子供の心も捉えるだろうけど、、イヤ、
完全大人向けでしょ。宮沢賢治、やばい。
梅原猛先生は、宮沢賢治を「宗教者」として
しょっちゅう著書の中で引き合いに出す。
賢治の父は篤い浄土真宗の信者なのだ。
南無阿弥陀仏をひたすら唱え、
自身の往生を願う親鸞の教え。(自利)
賢治はそれが不満で、日蓮宗の法華信者
となり、家を出てしまうんだなー。。
そして、雨ニモ負ケズ、なめとこやまの熊
など、利他行を説く作品を沢山書いた。
でも、親鸞だって本来の教えは
「二種廻向」の利他行にあるという。
賢治が「悪人正機」ばかりでなく「教行信証」も
読んでいれば、きっとそれを理解し、
真宗信者のまま、また違った作品を残した
だろう。。。というのが梅原先生の持論なのだ
そんな賢治の葛藤を、私は今回
「セロ弾きのゴーシュ」に感じてしまった。
この作品は、賢治の最後の童話で、
亡くなる数日前まで推敲してたんだって。
ごうごうごうごう下手くそなセロを
狂ったように弾くゴーシュは、日蓮宗の
団扇太鼓でお題目を唱える賢治に見える。
喉から血を吐くまで、鳴くのを止めない!
というかっこうは、ナムアミダブツの
お念仏を唱え続ける父親にみえる・・・
そして、かっこうや狸、野ねずみに
少しずつ気づかされ、ゴーシュはセロを
立派に弾き、最後かっこうに謝るのだ。
「ああかっこう、あの時はすまなかったなあ
おれは怒ったんじゃなかったんだ。」
・・・いや逆かな~。かっこうが賢治かも?
なんてね、想像するのもまた楽し。(^-^)
「飢餓陣営」の面白さにはビックリしたなー
これは「コミックオペレット」といって
花巻農学校教師時代の賢治が脚本を書き、
生徒と上演したんだって。
食糧が無いので、何とか誤魔化して
バナナン隊長のバナナ勲章を食べちゃおう・・
と企てる曹長と兵士たち。
「見せて下さい」曹長→兵卒1「直ちに嚥下す」
「立派であります」曹長→兵卒2「直ちに嚥下」
「次はどれでありますか」曹長→兵卒3「嚥下・・」
のくだりは、書き方もシュールで面白く
吉本か三谷幸喜か、ってくらい笑えちゃう。
賢治の生徒さんによる再現 (大正14年卒)
「ベジタリアン集会」は子供読者そっちのけ。
各宗教者が、動物を食べることの是非を
巡って、専門用語で大論戦を繰り広げる、
へ理屈に見えて割と真理・・・面白い。
▲動物を食べないと食料は半分になる。
すると人間10億死ぬぞ。見殺しか!
▲植物は食べても可哀相じゃないのか。
草にも意識があるかもしれないぞ。
▲キャベツを作るのに青虫100匹殺しますぞ。
さらに、アメーバやバクテリアまで出し
最後は仏教徒同士で親鸞批判?
宮沢賢治。じっくり研究して読んだら
深いんだろうな。面白いだろうな。
これも悲しすぎる利他行のお話しだ。。
そういえば、何かの本に
死んで死骸を曝さないのは人間だけ、
って書いてあったっけ。
他の動植物は全て、死ねば死骸を食べられ
食べた生物の命を繋ぐモトになる。
死んで食べられることこそが、生々流転
真の利他行。さぁ、人間どうする。