●法然~十五才の闇(上・下) @梅原猛 | ★50歳からの勉強道~読書録★

★50歳からの勉強道~読書録★

本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

法然の壮年期は、保元・平治の乱を経て
平家が滅亡し、鎌倉に武士政権が出来る、、
という、古代から中世への過渡期で、
平家物語、方丈記、、戦火と天変地異で
人々がこの世で地獄を見た時代。


歴史の中に見る法然は、、、
後白河法皇、九条兼実の帰依により
大きな力を得る一方、
九条兼実の弟で天台座主でもある慈円との
深い関係と、軋轢がある。


「敦盛」で有名な関東の荒武者・熊谷直実や、
北条政子は熱烈な信者であり、弟子として
法然と親しく交わったんだなぁ。






最澄・空海をはじめ、同時期の宗教家の中で
法然の残した痕跡は圧倒的に多くて
沢山の肖像画と、沢山の「法然伝」、
そして沢山の優秀な弟子が日本中に浄土教を
広め、日本人半数近くは浄土宗関係だ。


「法然を知らなければ日本仏教はわからない」
 と、梅原先生は、15年もかけて
法然の人生を徹底的に研究しているぞ。


法然上人絵伝(知恩院・国宝)
法然を裸足で出迎える九条兼実





だけど、法然の言ってることは
めっちゃラディカルなんだ。てか暴論?


浄土教の聖書とも言うべき「選択集」は
「ただ口で称えるだけ」の「口称念仏」のみ
正しい往生の方法として選択するもので、


それは同時に!   驚くことに!
寺社を建てたり、厳しい修行はもちろん、
極楽を観ずる行や、仏を心に念ずる行など
簡易な行をも全てを
「選捨」して否定するものだった!


これでは全ての仏教に対する冒涜だ!
もちろん攻撃されて、流罪。当然だよね。

「選択本願念仏集」草稿本   (重文)
浄土宗=「せんちゃく」 浄土真宗=「せんじゃく」




源信の往生要集にはちゃんと段階があった
んだ。真言も天台も肯定し、行のできない
凡夫は観想の念仏を、それもできない
無知の者は口称だけでも仕方ない、と。


コレでも全員救われるのに、、
わざわざ曲解とも思える強引な解釈で
「専修」に「一向」を「選択」したのは何故か?
あの時代背景無しには、考えられないこと
だけど、、どんだけ勇敢な蛮勇か。

熊谷寺(ゆうこくじ)に法力房蓮生の熊谷直実
梅原探偵は、御伽草子にもなった「小敦盛」の
敦盛の遺児は、法然の弟子の源智?と推理。






この革命的で破壊的な仏教を引き継ぎ、
さらに語り残した思いまで、完成させたのが
親鸞の「悪人正機」と「二種廻向」だ。


梅原先生は親鸞の悪人正機にばかり注目する
のは、近代浄土教の大変な誤りだ!
と怒っていて、
「往相廻向」と「還相廻向」こそが法然の目指す
大事な利他仏教であり、
これを完成させた二人は奇跡の師弟だ、と。


善信聖人親鸞絵伝
親鸞に門外不出の「選択集」を託す法然





二種廻向とは、
念仏をして極楽浄土へ往生したら、(自利)
仏となって、衆生救済のためにこの世に
還らなければならないこと。(利他)


つまり源信や法然、親鸞はインドや中国の
祖師の生まれ変わりで、私たち念仏者も皆、
極楽浄土からやって来たのだ。
こう考えれば、利他の行に励まなければ
いけない、、という自覚が芽生えるはず。。


なるほどねー。。私もどこかの元・仏様?・・・
それなら沢山人に親切にして、良い浄土に
往生し、またこの世に帰ってこようかな。


ただ天国に行けますように。。。より、
なんと素敵な「良い人生まれ変わりサイクル」
ではありませんか。   (^_^)v


法然房源空