●「即身成仏義」「声字実相義」「吽字義」 @空海 編/加藤精一 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

またまだ続くよ愛読書は空海。第五弾。


「即身成仏義」   そくしんじょうぶつぎ
「声字実相義」   しょうじじっそうぎ
「吽字義」           うんじぎ
は、「即声吽の三部」    (そくしょううん)
と呼ばれる密教必読のテキスト。


それぞれ議題は違うが、言わんとする趣旨は
共通で、広大無辺なる大日如来の説明だ。


空海の難しい理論は理解できないけれど、
結論だけを見れば意外に簡単で。。

貴方も私も、この世の全ては
大日如来と同一だ。
自分の中の大日に気付け!
自分の素晴らしさに気付け!





毎度、訳・編集の加藤精一さんは
空海の理論は突飛なようで、実は
仏教の歴史を正確に踏まえて構成されており
その知識がないと理解できない、と言う。



●仏教は、約2500年前にインドに出生し
80才で入滅した釈迦(尊称・釈尊)に始まる。
「仏陀」とは覚者、真実を覚った人で、
釈迦在世中、弟子たちは仏陀釈迦と呼んだ。


釈迦入滅後仏陀は既にこの世から去った」
彼の残した教えにより生きよう、という
一部の弟子が小乗仏教グループとなり、
目的は仏弟子の聖者たる「阿羅漢」になること

京都六角堂の十六羅漢




これに対し在家の弟子は、釈迦の示した
「人格」を光として、様々の如来を生み出し
釈尊のような高い人格を全て仏陀とする
大乗仏教となる。我々も仏陀に向かって
努力する菩薩になろう。しかし、
仏になる「成仏」は長い時間がかかる為、
菩薩道を歩むことが人生の生き甲斐となる。



ここから空海は、大乗仏教を
一歩進めた完成形として、密教を導きだす。

釈迦を含む多数の如来や菩薩の根本に
大日如来という仏陀が存在する!
その身体は虚空に遍満し
全ての存在の根源であると同時に、
我々も大日如来と同体なのだ。


仏でない者が仏を目指すのではない
既に仏であることに気付け、と。(即身成仏)






つまり過去仏教と全く逆のことを言いながら
恐るべき空海の頭脳は
各宗派を否定することなく、それぞれの教理
の中のからくり箱に、全ての根源たる秘密の
教えとして、密教をしまいこんでしまった。


こうして宗教的な対立を解消しつつ、
全てを統合する別格な存在として、
必要に応じて展開し、折り畳み、かつ
論理が破綻することがない。。。
まさに空海にしかできない神技、といえる。






仏陀観のどんでん返しにも驚くけど
苦悩やら地獄やらが全く描かれていない
密教の曼荼羅にも驚かされる。


空海によれば、大日如来を中心に、四仏~
四菩薩~と囲む曼荼羅は、無限に広がって、
私ら衆生も、曼荼羅上に収まっている!
そしてその全てが大日如来と同体だ!
という、なんと究極の自己肯定。


それは例えば、一つの灯明に無数の穴が
開いたおおいをかぶせて、中の灯明の光が
無数の光の点に見えるようなものです。
、、ってこの例え、スゴくない?


人間は自尊心を持ち、現世で成仏できる。
その力を外ではなく、自分の中に求めよ!
力強い前向き思考を持ち、ひたすら理想に
向かう、心の図。それが曼荼羅なのだ。

金剛界曼荼羅




地獄もない、苦悩もない、全然仏教ぽくない。てか科学っぽい言葉が多い。。でも、
大日如来との感応に、真言を唱え、印を結び
護魔たき加持祈祷、、となると
一気に怪しげになっちゃうけど。。。


この真言(マントラ)が、また面白くて、、
サンスクリット=梵字は 51文字、
初めが「あ」で、終わりが「うん」。
あれ?どこかで聞いたような・・    σ(^_^;)?


口を開けば必ず、阿(あ)の声が出る。
阿は全ての存在の源→阿字観!

吽(うん)にはこの世の全てが収まっている。
この世の全てだよー!わかるかなー??






なんと先月、サンスクリットでマントラを
唱えると脳の海馬に影響がある、、という
スペインの調査ニュースがあったばかり。
果して密教は科学的か、まやかしか。


そしてサンスクリットと日本語の関係や
如何に?興味津々、となるよね。

Newsweek日本版  2018/6/8