またまだ続くよ愛読書は空海。第五弾。
「即身成仏義」 そくしんじょうぶつぎ
「声字実相義」 しょうじじっそうぎ
「吽字義」 うんじぎ
は、「即声吽の三部」 (そくしょううん)
と呼ばれる密教必読のテキスト。
それぞれ議題は違うが、言わんとする趣旨は
共通で、広大無辺なる大日如来の説明だ。
空海の難しい理論は理解できないけれど、
結論だけを見れば意外に簡単で。。
貴方も私も、この世の全ては
大日如来と同一だ。
自分の中の大日に気付け!
自分の素晴らしさに気付け!
毎度、訳・編集の加藤精一さんは
空海の理論は突飛なようで、実は
仏教の歴史を正確に踏まえて構成されており
その知識がないと理解できない、と言う。
●仏教は、約2500年前にインドに出生し
80才で入滅した釈迦(尊称・釈尊)に始まる。
「仏陀」とは覚者、真実を覚った人で、
釈迦在世中、弟子たちは仏陀釈迦と呼んだ。
釈迦入滅後①「仏陀は既にこの世から去った」
彼の残した教えにより生きよう、という
一部の弟子が小乗仏教グループとなり、
目的は仏弟子の聖者たる「阿羅漢」になること
これに対し在家の弟子は、②釈迦の示した
「人格」を光として、様々の如来を生み出し
釈尊のような高い人格を全て仏陀とする
大乗仏教となる。我々も仏陀に向かって
努力する菩薩になろう。しかし、
仏になる「成仏」は長い時間がかかる為、
菩薩道を歩むことが人生の生き甲斐となる。
ここから空海は、大乗仏教を
一歩進めた完成形として、密教を導きだす。
③釈迦を含む多数の如来や菩薩の根本に
大日如来という仏陀が存在する!
その身体は虚空に遍満し
全ての存在の根源であると同時に、
我々も大日如来と同体なのだ。
仏でない者が仏を目指すのではない
既に仏であることに気付け、と。(即身成仏)
つまり過去仏教と全く逆のことを言いながら
恐るべき空海の頭脳は
各宗派を否定することなく、それぞれの教理
の中のからくり箱に、全ての根源たる秘密の
教えとして、密教をしまいこんでしまった。
こうして宗教的な対立を解消しつつ、
全てを統合する別格な存在として、
必要に応じて展開し、折り畳み、かつ
論理が破綻することがない。。。
まさに空海にしかできない神技、といえる。
仏陀観のどんでん返しにも驚くけど
苦悩やら地獄やらが全く描かれていない
密教の曼荼羅にも驚かされる。
空海によれば、大日如来を中心に、四仏~
四菩薩~と囲む曼荼羅は、無限に広がって、
私ら衆生も、曼荼羅上に収まっている!
そしてその全てが大日如来と同体だ!
という、なんと究極の自己肯定。
それは例えば、一つの灯明に無数の穴が
開いたおおいをかぶせて、中の灯明の光が
無数の光の点に見えるようなものです。
、、ってこの例え、スゴくない?
人間は自尊心を持ち、現世で成仏できる。
その力を外ではなく、自分の中に求めよ!
力強い前向き思考を持ち、ひたすら理想に
向かう、心の図。それが曼荼羅なのだ。
大日如来との感応に、真言を唱え、印を結び
護魔たき加持祈祷、、となると
一気に怪しげになっちゃうけど。。。
この真言(マントラ)が、また面白くて、、
サンスクリット=梵字は 51文字、
初めが「あ」で、終わりが「うん」。
あれ?どこかで聞いたような・・ σ(^_^;)?
口を開けば必ず、阿(あ)の声が出る。
阿は全ての存在の源→阿字観!
吽(うん)にはこの世の全てが収まっている。
この世の全てだよー!わかるかなー??
なんと先月、サンスクリットでマントラを
唱えると脳の海馬に影響がある、、という
スペインの調査ニュースがあったばかり。
果して密教は科学的か、まやかしか。
そしてサンスクリットと日本語の関係や
如何に?興味津々、となるよね。
Newsweek日本版 2018/6/8