●大本営が震えた日 @吉村昭 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

「大本営」の本営はそもそも昔の「本陣」
みたいなもんで、総司令官のいる場所。
これを仰々しく言って「大本営」。


戦時中のみ大元帥たる天皇に直属して
設置され、大平洋戦争の時は1937年11月20日
宮中に発足し、敗戦まで継続した。


中身は陸軍と海軍。参謀本部が陸軍部、
軍令部が海軍部で、それぞれに総長と次長、
作戦部長・課長がいる。


「統帥権独立」で、政府とは別物なので、
内閣総理大臣とか外務大臣は入らない。
軍政の関係で陸軍大臣、海軍大臣は
大本営会議に参加するが、発言権はない。


そして天皇陛下は天皇と大元帥の二つを
使い分けている。


大元帥として大本営会議に出席するが
発言はせず、
政府の天皇としては、内閣が一致して
決定した国策には反対しない。んだそうだ。


ノモンハンでは陸軍参謀が大元帥を堂々と
無視したし、三国同盟も内閣一致したから
反対できなかった。天皇はつらいなあ。


ちなみに海軍は「大平洋戦争」と名付けよう
といい、陸軍は大東亜新秩序建設を目的と
する「大東亜戦争」と呼ぶべしと主張した。


本書には関係ないが、大本営について。
しかし、陸軍と海軍ってホント仲悪いんだね。







この本は開戦までの一週間、
昭和16年(1941)12月2日から8日までの
大本営の超緊張状態を描いている。


勝ち目のない戦争に真珠湾とマレー半島
「両面奇襲」という大博打で臨む大本営。


台本通りにいかない突発事態の連続に
いちいち背筋凍らせながら、企図秘匿に
全力を尽くす。    ((((;゜Д゜)))




「桶狭間とひよどり越と川中島を併せ行う」
                by   山本五十六      という海軍の
真珠湾攻撃「ニイタカヤマノボレ1208」 は


「トラ・トラ・トラ・・」  (我奇襲に成功せり)
という返信となって大本営に返ってきた。

真珠湾攻撃




そして同時に「ヒノデはヤマガタとす」。
(開戦日は八日、という意味)
陸軍は世界戦史上稀に見る、という
マレー半島奇襲上陸に成功する。

クアラルンプールに進撃




「大本営陸海軍部発表
 帝国陸海軍は今八日未明、西大平洋に
 おいて戦闘状態に入れり」


市民は驚いた。誰ひとり知らなかった。
軍人230万、一般人80万。恐ろしい死者を
出す戦争は、こうして日本が始めた。

大本営の御前会議。




吉村さんは、残された記録をたどることで
この秘密開戦の裏にどんな事実があったか
、、明らかにしたかった、という。


取材助手を使用しない吉村さんは、北海道
から九州まで回り、ほぼ全員の登場人物に
お会いしたそうだ。ほんとスゴすぎ。


解説の人も書いている。
「事実にこざかしい解釈を加えないことで
吉村作品は硬質な純度を保ち続ける。」
仰るとおり。   頭下がります。m(__)m