阿闍梨【談笑】

❖酒井雄哉阿闍梨VS池上彰対談 2

◆苦しい行をするその理由 




◇苦しい行をする理由


池上 底しれない生命力が呼び覚まされたり、一方で自分の中の悪と向き合わされたり、、、、、苦しい行はいろいろなことを教えてくれるのですね。ゴータマ・シッダールタつまりお釈迦様が悟りを開く前に、苦しい行をやっていますよね。そうした行というのは、やはり、それを追体験する意味で行われるのですか?


酒井 そうともいわれます。もう一つは、仏様は四六時中、衆生のために尽くされているわけですから、自分たちも仏様に近づこうとしたら自分も欲望を絶ってそういう境地に立たなければならない、仏様と一体にならなければならない、という意味もあるようです。仏様の境涯にならなかったら人を救うことはできない、というわけですな。


池上 仏の教えは奥が深いですよね。仏教の建前としては、苦行をしたから悟れたわけじゃないということになっていますが、やはり、苦しい行をしたからこそ、そういう教えを持つことができたのじゃないかと思いますね。


酒井 お釈迦様も、王子様の時から仏道に導かれる何かを持っていたのではと思いますね。そして「四門出遊」❉で伝わるように、世俗の苦しみを知り、出家の動機となり、自らの身を投じて苦行に挑み、解脱の境地に立って涅槃につかれたと思います。


池上 いろいろな苦難を乗り越えたからこそ。


❉四門出遊 釈迦がまだ太子のとき、王城の東西南北の四つの門から郊外に出掛け、それぞれの門の外で、老人、病人、死者、修行者に出会い、その苦しみを目のあたりにして、人生に対する目を開き、出家を決意したという伝説


この世で大切なものってなんですか 酒井雄哉 池上彰