阿闍梨【外伝】一隅を照らす

❖7月15日 盂蘭盆会

引用 天台宗公式サイト 法話集


葛川夏安居

 

7月15日


 これは盂蘭盆会の日とされています。月遅れの8月にお盆を迎える地域も多く、すぐに気づかないかも知れません。またお中元の時期でもあり、贈り物の心配をされる方もいるでしょう。お中元は中国の民間信仰である道教の習俗で、1月15日の上元、7月15日の中元、10月15日の下元の三元が贖罪の日であり、神をまつった日であったとされます。その中元と盂蘭盆会が混同され、祖霊を供養する日になったようです。


 日本では、『日本書記』推古天皇14年(606)に「寺毎(ごと)に4月8日、7月15日設斎(おがみ)せしむ」とあるのが初見とされます。お釈迦様の誕生日である潅仏会と、盂蘭盆会の法要の始まりの記録です。


 ところがこれらの事例よりも遙か昔、お釈迦様が活躍された地域と時代に、雨安居(うあんご)といわれる行事が行なわれ、夏の時期ですので夏安居(げあんご)とも呼ばれていました。それは雨期と呼ばれる南方独特の大雨の季節でした。修行僧たちはその間一箇所に留まり、托鉢は雨の間隙をぬって近所へ行き、それ以外は修行や学問に励みました。お釈迦様は弟子たちに、この時期活発に生育・生長する草木や虫などを踏まないように、安居を命じたとも伝えられます。


 その雨安居が終わる日が7月15日でした。この日は修行僧が自ら起こした罪を懺悔(さんげ)するときでもあり、自恣(じし)祭と称され初期仏教の重要な祭日でもあったようです。その日には在家の人々が食事を持ち寄り、僧たちを供養したとされました。これが仏弟子の目連が地獄にいる母を助けるため百味供養したという話と重なり、お盆の行事になったともいわれております。


 日本での雨安居の風習は、盂蘭盆会の少し後、『日本書記』天武天皇12年(683)に「是の夏、始めて僧尼に請いて安居せしむ」という記事が始まりのようです。現在も比叡山では、葛川(かつらがわ)夏安居が修行されております。


 お盆やお中元の行事は、今でも一般の人々の間で広く行われていますが、雨安居はあまり知られていません。しかしその始まりは雨安居であり、それが盂蘭盆会とお中元になりました。自坊の近くには安居(あご)という地名があります。このように安居の名前は昔からずっと残っていたようです。


 日本でも梅雨が明けると、お盆やお中元の時期になります。アジアの習俗は古くからこのように継続されています。その時代に思いを致し、静かな気持ちでお盆を迎えたいものです。



(文・養福寺住職 池田 晃隆)

掲載日:2023年08月01日

https://www.tendai.or.jp/houwashuu/kiji.php?nid=254






❖盂蘭盆会の地域差と盆休み


◇お盆といえば旧暦の7月15日だった。


そもそも、明治5年(1872年)に新暦が導入されるまで、お盆といえば旧暦の7月15日(旧暦盆)でした。 新暦の導入(改暦)が決定されたのが明治5年11月、実施は同年12月3日。つまり明治5年12月2日の次の日が突然「明治6年1月1日」となったのです。


あわただしさの中で新暦に切り替わったため、人々の生活の中ではさまざまな混乱が生じ、お盆期間についても少なからず影響を受けたようです。その結果は…?


◇新暦7月盆を受け入れた地域


東京や神奈川県、北海道の一部や石川県金沢市、静岡県の都市部などでは新暦の7月盆が主流です。 旧暦から新暦に切り替わった当時、これを徹底させようと必死に努めていた明治政府に対し、そのお膝元であった東京やその周辺の地域、都市部などは令に沿って対応せざるを得なく、新暦7月15日にお盆を行なうようになったと言われています。

新暦7月盆を行う地域のお盆は7月13日~16日です。


◇新暦8月盆とした地域


北海道や東北、新潟県、長野県、関西地方などが8月盆。「月遅れ盆」とも呼ばれ、全国的にも多くみられるお盆の期間です。新暦の採用当時、明治政府の目の行き届かなかった都市部以外の地域では、やはり昔からの慣習をすぐに切り替えることにはならず、旧暦7月15日のお盆が行われ続けました。そして、旧暦7月15日に近い新暦8月15日をお盆とすることで徐々に落ち着いていきました。


新暦8月盆を行う地域のお盆は8月13日~16日です。


◇旧歴のお盆を守り続ける地域


旧暦盆といえば有名なのは沖縄です。沖縄では現在でもさまざまな行事を旧暦で行いますが、中でも「シチグヮチ」とも呼ばれるお盆はその代表的なもの。「家族を大切に、祖先を大切に」という考えの強い沖縄では、旧暦盆は一年で最も大切な行事です。


旧暦に沿っているため旧暦盆の期間はその年によって変わり、9月にずれ込む年もあります。沖縄のほか、関東北部や中国・四国・九州地方、南西諸島等でもこの期間で行われるところがあります。



日本のお盆といえば、本来は旧暦盆ひとつだけでした。1872年に新暦が導入されたため、いろいろと複雑になってしまいましたが、大切なことは、昔も今もお盆本来の目的「祖先の霊をお迎えし、おもてなしをする大切な行事」に変わりはないということです。


引用 イーフローラ


◆お盆が祝日ではないのに休みになる理由


お盆自体は祝日ではないにも関わらず、多くの企業がお盆を休日に指定しています。これは、江戸時代に存在していた、「藪入り(やぶいり)」と呼ばれる、夏時期に帰省する風習が受け継がれたことが理由とされています。


藪入りは、住み込み奉公をしている奉公人が、お正月とお盆の16日前後に休みをとって実家に帰ることができるという習慣で、現代においても年末年始・夏時期の帰省として残っています。特に、夏時期の帰省はお盆の風習と結びついたことで、家族や親族が揃ってご先祖様の供養を行う風習として根付きました。