阿闍梨【外伝】


❖【対談】比叡山大阿闍梨×DAIGO「子育ては修行。大切なのは次に伝えること」


引用 2023.01.04  女性セブン


 


「不惑」を過ぎ、孔子が自らの宿命を悟ったと表現した「知命」を迎える2人が緊急対談。仏教で最も苛烈な修行を満行した光永圓道大阿闍梨(47)とDAIGO(44)が「人生」について語り合う。


 * * *

DAIGO:今回、阿闍梨さんの『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』、本当に勉強になりました。家の掃除、心の掃除は、本当に大事。結婚してなかったら、ここまで強く共感はできなかったと思います。


光永師:ありがとうございます。


DAIGO:ぼくはこれまでの人生、結婚するまでは「いかに掃除せずに逃げ切るか」をテーマに生きてきました。かなり恥ずかしい話なんですけど。


光永師:自分で掃除をしなくても、どなたかが整えてくださったのですね。


DAIGO:だから結婚した直後は、家のことはなにもやっていなくて。いつだったかな、ある日、妻が仕事に出ているときに、居間のソファに座っていたんです。こう、足を組んで、背筋を伸ばして、カッコつけて、ひとりで。


光永師:ほかに誰が見ているわけでもないのに(笑い)。


DAIGO:そうなんです! でも、突然、「なにやってんだろ。妻が帰ってくるまでに、ぼくが掃除すればいいんだ」と思って。


光永師:最初はやり方もわからないでしょうし、ストレスになりませんでしたか。


DAIGO:いきなり壁にぶちあたりました。掃除機のヘッドって、動かすときにちょっと曲がったら、もうその部分はきれいになってないじゃないですか。だから、部屋の角とか隅が難しい。きっちり見ないと。


光永師:比叡山延暦寺を開いた伝教大師さま(最澄)が、同じことをおっしゃっています。「一隅を照らす」。家庭でも仕事でも、人間関係でも、華やかな舞台の上にばかり注目するのではなく、縁の下の力持ちを讃えましょう。隅々にまで、意識を向けられる人を目指しましょう、といった意味合いです。


DAIGO:白い足袋の汚れは、先に石鹸で手洗いすると本に書いてらっしゃいましたが、ぼくも洗面所で娘の服の染み抜きをやるようになりました。あと、風呂掃除も。なんか自分でアピールした感じですけど、ちゃんと一隅を照らせていますでしょうか。


光永師:はい、見事に。



 

続けるための秘訣


DAIGO:以前は、ライブをやって、打ち上げもやって、朝5時に帰ってくるような生活でした。いまは娘が6時半ぐらいに起きるので、ぼくもその時間に起きています。


光永師:お寺と同じですね。覚性律庵(圓道阿闍梨が住持するお寺)では、毎日5時半から仏さまへのおつとめです。


DAIGO:千日回峰行【※】の最中、阿闍梨さんは朝から晩までは、一般のお寺の住職さんと同じようにおつとめをして、深夜から次の日の朝まで回峰行。毎日4時間ぐらいの睡眠で「やるべきこと」を100日、200日と連続して続けてこられて。その時間のやりくりというか、「続けるための秘訣」を教えてもらえませんか。


【※ 地球1周分に相当する約4万kmを約7年かけて歩き抜き、9日間にわたって断食・断水・不眠・不臥で一心に不動明王を念じるという、平安時代から1000年以上続く難行苦行の修行】


光永師:DAIGOさんも「続けられている」と思いますよ。たとえば、44才になってもすっきりした体形なのは、そのスタイルを維持する努力が続いてきたからでしょう。


DAIGO:ぼくは毎年、お正月に目標をメモにするんです。たとえば「今年は、1週間に1曲作る!」とか箇条書きにして……でも結果としては、ほぼ出来ていません……。


光永師:千日回峰行は、たしかに言葉の上では「満行した」ことになっていますが、本質的には終わっていません。それは数字にも表れています。千日回峰行は、じつは「1000日」ではありません。最後の100日は75日の行で終えることになっています。つまり1000日ではなく「975日」で終えることになっているのです。悟り切ることは決してなく、一生をかけて残りの25日を行じるということになります。


DAIGO:そうなんですね。残りはあと25日だけなのに。


光永師:まさに、それが理由です。完璧というものはない。物事は常に途上にあり、達成というのは自分が思うより遥か先にあります。たとえ1年では達成できなくても、2年、3年、5年かけてでも達成したならば、失敗にはならないのです。


DAIGO:なるほど。


大切なのは「次に伝える」こと


光永師:むしろ満行してから始まるのが、千日回峰行の本質かもしれません。「残りの25日」を、自分の一生をかけて求めていくのが、本当のところだろうと考えています。


DAIGO:ずっと終わらないのですね。


光永師:もし終わりがあるとすれば、「次に伝えること」ができたときでしょうか。その意味では、私とDAIGOさんは「同じ修行」の道半ばにいる者同士ですね。


DAIGO:ぼくが !? 阿闍梨さんと同じでいいんですか。


光永師:DAIGOさんは家庭を守るために働いて、掃除をして、時には料理もなさる。仏道の修行でも、日常の振る舞いでも、勉学でも、仕事でも、趣味でも、大切なのは自分で身につけたことを「次の者」に伝える、伝え切ること。


 ですから、子育てはまさに修行ですね。お子さんにすべてを伝え切る、伝えるに値する経験や価値を追い求めることを、これからの目標となさってはいかがですか。


DAIGO:長い道のりですけど、頑張れそうな気がします。今日は、本当にありがとうございます。「A・M・H」です!


光永師:その心は。


DAIGO:阿闍梨さん・マジ・ハンパない!


光永師:うれしいです。



【プロフィール】


光永圓道(みつなが・えんどう)/1975年生まれ。1990年に15才で得度受戒。2000年に延暦寺一山・大乗院住職に・2009年、千日回峰行を満行し北嶺大行満大阿闍梨となる。現在は、大乗院住職、覚性律庵(滋賀県大津市仰木4-36-20)住職。光永圓道大阿闍梨が、仏門の修行と千日回峰行の荒行を経て到達した「心地良く生きるための作法」を説いた『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』が発売中。日々の掃除を通して心を整える極意とは。




DAIGO(だいご)/1978年生まれ。2003年にDAIGO☆STARDUSTとしてメジャーデビューし、2007年に3人組ロックバンドBREAKERZを結成。独特のキャラクターで注目を浴び、歌手のほかにバラエティーや舞台などで活躍。