❖【一隅を照らす】天台宗不軽山道心寺 住職 露の団姫師


今回は、日頃、X(旧Twitter)、ブログ、Facebookを駆使して情報を日々発信し、落語家として高座に上り、また、天台宗僧侶として全国を講演に行脚する。露の団姫師をご紹介させて頂きます。


つらい経験から「悩み相談」の寺を開山 落語家・天台宗僧侶 露の団姫さん


引用 2021/8/13 産経新聞


 

テレビ・ラジオのバラエティー番組などで活躍する落語家で天台宗僧侶(律師)の露(つゆ)の団姫(まるこ)=法名・鳴海春香(なるみ・しゅんこう)=さん(34)が、兵庫県尼崎市に天台宗寺院の「道心寺」を開山、初代住職に就任した。2年前から浄財を募り、ようやく作り上げた寺。本堂には、高座が設(しつら)えられ、法話だけでなく、定期的な落語会も開催する。「尼(尼崎市)の尼さんですわ」。落語家と僧侶という〝二足のわらじ〟の本格始動。その思いを聞いてみると、死を考えた過去の悲しい経験が浮かび上がる。道心寺を、人びとの苦を抜き取り、福を与える仏教の「抜苦与楽(ばっくよらく)」の場に、と力を込める。


落語家と僧侶、二足のわらじ


コンクリート打ち放し、ガラス壁に曲線が印象的な外観を持つ道心寺は3階建て延べ200平方メートル弱。1階がロビーで、2階が本堂。正面には小ぶりな本尊を安置する。左手に金星をささげ持った「明星観音」。暗闇の中でも、人を照らし導く仏で、法華経などに登場するものを仏師が造形した。


団姫さんは「天台宗はわりと自由なので、本尊は私が決めました。ただ、明星観音をまつっている寺を聞いたことがなく、本尊にした寺院は全国で初めてだと思います」


そして、本尊の右側に少し離れて設けられているのが本格的な高座。前には二人掛けのスツールが15並び、配置の角度を変えると、本尊に正対する。


「もともとは割烹(かっぽう)料理店として使われていた建物を買い取りました。都市部の寺なので、外観はそのまま使えます。ただ、寺院の形にするための内部改装費を寄付でお願いしました。2年かけましたが、天台宗以外の仏教宗派の人や神社関係、別宗教の人まで、多くの人から浄財を寄せていただきました」


「住職を務める寺として、山寺という話もありましたが、悩み相談や落語の高座をするなら、街中の方が都合がいい。場所を限定せずに探しましたが、尼崎はダイバーシティー(多様性)の街。私の活動コンセプトである(天台宗開祖の)最澄の『一隅を照らす』という教えにもピッタリでした。尼の尼ということにもなりますし…」


この教えは、最澄が著した「山家学生式(さんげがくしょうしき)」の中にある。「一隅を照らす。これ則(すなわ)ち国宝なり」。団姫さんは「自分の持ち場で一人一人が、世のため人のためと頑張ることで、世の中が明るく照らされる」ことだという。


団姫さんが力を入れている悩み相談。それは僧侶としての目標である「自殺者を一人でも減らすこと」を成し遂げるため、という。その背景には、自殺まで考えた、ショッキングな出来事があった。


人間不信の体験踏まえ


落語家で天台宗僧侶、露の団姫=法名・鳴海春香=さん(34)には、つらい思い出がある。多感な高校生時代。「死にたい」。そんな思いにとらわれた団姫さんを救ったのが法華経(妙法蓮華経)だった。仏の慈悲でいかなる人間もすべて成仏し、永遠に救われるという教えが、団姫さんに落語家と僧侶という「二足のわらじ」をはかせることを後押しした。


名古屋市の高校に通っていた。2年生の時のことだ。わいせつな漫画を同人誌に描いている漫画家のペンネームが、団姫さんの本名と同じであることを知った。極めて珍しい名前なので、漫画家が自ら生み出したとは考えにくい。その漫画家に問い合わせると、「テレビドラマに出演していた配役の名前からとっただけだ」。すぐに、「それは私です」と言って、名前の使用や出版の停止を求めた。が、拒否されたため、提訴した。裁判では、パブリシティーの侵害が認められて、名前の使用禁止や慰謝料の支払いを勝ち取った。ただ、発行された1万部もの同人誌の回収は認められなかった。


実は、団姫さんは小学生のころから、劇団に所属し、子役として舞台に立ったり、テレビドラマなどに出演したりしていた。漫画家の見たドラマにも、本名で出演。出演者名のテロップを見られて、名前が盗用されていた。


「親からもらった大好きな名前なのに、汚されたという思いと、ネットで見た同級生から、私がわいせつな漫画を描いていると思われていたことが分かり、人間不信にもなりました。それで、死にたいと考えるようになりました」


実は、団姫さんは小学生のころから、劇団に所属し、子役として舞台に立ったり、テレビドラマなどに出演したりしていた。漫画家の見たドラマにも、本名で出演。出演者名のテロップを見られて、名前が盗用されていた。


「親からもらった大好きな名前なのに、汚されたという思いと、ネットで見た同級生から、私がわいせつな漫画を描いていると思われていたことが分かり、人間不信にもなりました。それで、死にたいと考えるようになりました」


「落語家になることはもちろんですが、その後は僧侶になりたいという思いがありました。あくまで、僧侶前提の落語家を考えたということです」


団姫さんは高校卒業後の平成17年に上方落語の露の団四郎に入門。その師匠にあたる二代目露の五郎兵衛の下で3年間、住み込み修行した。怪談噺(ばなし)・艶笑(えんしょう)噺を得意にした五郎兵衛に稽古をつけてもらいながら、落語を学び、落語家として独り立ちした。


古典落語のほか、仏教を題材にした「仏教落語」を自作し、高座にあげている。年間250本以上の高座をこなし、テレビやラジオの番組にも出演。忙しくしていた平成23年、法華経を中心思想とする天台宗(総本山・比叡山延暦寺)で得度。高座の合間を縫って、延暦寺に通いながら、修行した。


「修行の中には、60日間こもる必要があるものがあり、落語家としてのスケジュール調整が大変でした。修行は厳しく、護摩木をたいて行う護摩行では、足の爪がはがれるほどでした」。一定の修行をこなした24年に、正式な天台僧となり、さらに、修行を続けて、天台宗の僧階が律師(13ある僧階の12番目)となったのが平成30年。住職となる資格を得て、道心寺(兵庫県尼崎市)を開山した。


「自殺者を一人でも減らすことが僧侶としての目標」と話す団姫さん。落語家として精進するのと並行し、道心寺を拠点とした、自殺防止への取り組みを本格化させることにしている。





【プロフィル】つゆの・まるこ 昭和61年、静岡県富士宮市生まれ。高校卒業後に上方落語の露の団四郎に入門。3年間の内弟子修行を経て、古典落語、新作落語、仏教落語に取り組む。第6回繁盛亭輝き賞(新人賞)、第54回なにわ藝術祭落語部門新人賞を受賞。高座のほか、テレビ・ラジオでも活躍する。その一方、平成23年、天台宗で得度。24年に比叡山で四度加行(しどけぎょう)(密教の修行)を受けて、正式な天台宗の僧侶となる。天台宗の「一隅を照らす運動」の広報大使をつとめ、全国を回っている。主な著書に「プロの尼さん~落語家・まるこの仏道修行」「露の団姫の仏教いろは寄席」など。


https://www.sankei.com/article/20210813-FNDSXQZPOJPGBILEWJSTMPHL2Y/ 


https://doshinji.com/