❖知ろうと思ったら実践すること


阿闍梨さんの歩幅は八十五センチ、千日回峰行では約四万キロメートル。ほぼ地球一周分を千日かけて歩く。

一日約四十キロメートル、阿闍梨さんの歩幅なら一日四万七千歩ということになる。

阿闍梨さんの足の裏はそれだけ大地を噛み締めて、地球とのキッスを重ねたことになる。

それだけの距離を歩くうちに、阿闍梨さんには見えてきたことがあるのではないか。

阿闍梨さんは出家後、小寺文頴師の勧めで、小僧をしながら叡山学院に通った。

初めは授業の内容がまったくわからなかった。

しかし、三年後、努力を重ねた阿闍梨さんは、学生(がくしょう)にとって最高の栄誉である天台座主賞を受ける資格を得るまでになった。

比叡山の開祖、伝教大師の尊称も知らなかった人が、である。

学びな一歩を踏み出したからこそ、到達できた知の世界だった。

知ろうと思ったらまず、踏み出すこと。

実践の第一歩を地平に刻むこと。

考えているだけでなく、体を動かして何事かを始めること。

その先にのみ、拓ける世界がある。

比叡山・千日回峰行 酒井雄哉画賛集 画 寺田みのる 小学館文庫