❖勝手に自分で学ぶしかしょうがない


この賛語は弟子の藤波源信行者に向けて発したもの。自分に厳しい阿闍梨さんは、また弟子にも厳しい。


『何かをするのは辛くないことはない。何をしたって、普通に生きていくことだって辛い世の中、それを承知で皆生きている。弟子の藤波も行をすると決めたなら、他の道にとらわれないで、ただその道をひたすらに進んでもらったらそれに越したことはない』と、阿闍梨さんは言う。


その阿闍梨さんには、三人の師がいる。


比叡山の仏門に導いてくれた小林隆彰師、仏教とは何かを学問として教えてくれた小寺文頴師、そして、行の師である箱崎文応師。


阿闍梨さんにとっては命にも代え難い尊い存在の三人だ。


三人の師より授かった仏の教えを独自の精神力で具現化したものが今日の阿闍梨さんの姿といえよう。


まじめで純真無垢といった藤波行者も平成十五年秋に千日回峰行を無事達成され、大阿闍梨になられた。


偉大な師の姿を間近に見ながら、弟子は自分の道を自分で見つけ、学んでいく。


こうした師と弟子の関係が脈々と連なるのも比叡山の歴史である。



比叡山・千日回峰行 酒井雄哉画賛集 画 寺田みのる 小学館文庫



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