❖いい欲を持つことは大事。


人間にさ『欲』があるよね。仏教では欲を抑えないと思われているけど、『人に迷惑がかからないような欲』だったら、僕はいいと思うよ。


僕が修行をやるのだって、一種の『欲』だもんな。千日回峰行を二回やったのだって、一回目が終わったあとに、『まだやることがあるな。もう一回やったらなんとかなるんじゃないか』と思って、もう一回りしただけなんだ。


二回目が終わってからは、『今度は日本中を歩いてみようかいな』と思って、いろいろなところを歩いた。それも一つの『欲』だと思うよ。


そのうち、『回峰行のルーツはどこなんだろう』と思って、中国に行ったんだ。それが終わったら、東南アジアを歩いてみて、そのあとは、イタリアのローマを歩いてみた。そうやって世界中を歩き回ったのも、『欲』があるからだと思うよ。


欲がなくなってしまうと、『なにもしないで、じっとしていて、これでいいんだ』と思って仕舞うかもしれないよね。欲があるから、前向きに物事を考えていくことができるという面もあると思うんだよ。


だから『いい欲』は残しておかなきゃならないだろうね。『欲』があるから、世の中も進歩するし、発展もする。


ただ、注意しなきゃいけないこともあるよね。あんまり欲張りすぎて、公私混同してしまうと、おかしなことになってしまうから、私的な欲でなく、世の中のためになるような『公的な欲』を持つといいと思うな。


今、世の中いでは、若い人が意欲をなくしているなんて言われているよね。この前『草食系男子』という言葉を初めて聞いてね、『このごろはダイエットブームだし、葉っぱばかり食べて、肉とかさかなを食べなくなったのかなあ』なんて思っていたんだけど、違うんだってね(笑)。『草食系男子』というのは、恋愛に関してあんまり欲がない人のことを言うんだってね。あまりに恵まれすぎていて、『いい欲』も減って、鈍感になってしまっているのかもしれないなあ。


けれど、『物事に前向きに取り組もうとする欲』とか、『学びたい欲』とか、『考える欲』とか、そういう『いい欲』は、いっぱい持っていたほうがいいと思うよ。


『学問のすゝめ』じゃないけど、『一生懸命に学びたい』という欲は持っていてほしいな。自分のために学ぶのではなくて、『世のため、国のため、世界のために学ぶんだ』というようなものの考え方で、学んでいくことが大切だね。


『みんなが幸せになるために、学問をして、生かす』というつもりで、若い人たちにはいろいろ学んでいってほしいなあ。


ー 人に迷惑をかけない、前向きな欲は大事に持ち続けたいね ー 酒井雄哉