イタリア人をも黙らせるモロッコ人 | イタリアでモロッコごはん

イタリアでモロッコごはん

イタリア在住 リツコがモロッコ人と結婚を決めた途端、介護同居生活が始まり今に至るドタバタと、美味しいモロッコ&地中海料理について語ります♪

留学当初、私のイタリア語は酷いレベルだったけれど

出逢った頃の夫のイタリア語レベルは

輪を掛けてヤバい感じだった。

 

 

私も最初の3年間は

ずっと知ったかぶりで

解らなくても、全てSìと言って済ませていた。

 

 

夫も同じように全てSìで対応していたが

彼はそのレベルで働いていたのだ。

 

そして、語学学校に通ったことは一度もなく

耳から覚えたヤバい文法で話すから

全ての動詞の活用変換が間違っていた滝汗

 

 

私と夫の決定的な違いは

手に職があるかどうか?だった。

 

 

夫は自分の職業に関してはプロなので

イタリア人よリも仕事が出来た。

 

だから、言葉など関係ない。

イタリア入国と同時に現在の職場に

引きずり込まれた形で今に至る。

 

 

私は、と言うと、チーズオタクで

チーズの会社で働いていただけの

何の取り柄もない人間だった。

 

 

こういう人間は、外国では使えない。

外国では手に職がある人間か

雇用主に何も疑問を抱かず、店の中にいることができる

素直な人間が重宝される。

 

 

夫は酷いイタリア語のまま私と結婚した。

 

不思議と私と夫は意思疎通に問題はなかった。

日本人の男性とは、全く分かり合えないことも

言葉を介さずとも、まるでテレパシーのように分かり合えた。

 

 

夫には職業柄、イタリア人の友人が

フィレンツェ中に散らばっていた。

 

街を歩けば誰かに呼び止められて

バールにカフェを飲みに行ったり

その場で立ち話になった。

 

 

そこでまた驚きの事実が発覚する。

夫は、酷いイタリア語なんて気にもせず

イタリア人の友人達と議論をしていた。

 

 

そして、あのお喋りなイタリア人が

黙って夫の話に聞き入っている。

 

夫は、イタリア人を黙らせて

何を話して聴かせているかと言うと

モロッコのこと、政治のこと、宗教のこと....

イタリア人が聞いたことない視点からの話を熱弁しているのだ。

 

 

私と夫との決定的な違いは

私は文法ばかり気になって

イタリア人と話すことを怖がっていたのに対して

 

夫は文法なんてそっちのけで

「議論する力」がもともとあるから

それをどうにか相手に伝えようと熱弁して

相手は黙って頷きながら聞いていたのだ。

 

イタリア人だって、納得がいかないつまらない話は

愛想を尽かしてサヨナラする。

イタリア人が黙って聞いているということは

何か面白い内容のことを話しているってことだ。

 

 

私は最近、イタリア人と二人で

夫のように話せるようになったけれど

20年前は無理だった。

 

議論する力なんて持ち合わせていなかったし

私の語学力では、言いたいことの

3%くらいしか表現できなかった。

 

 

夫はフランス語は話さないけれど

モロッコではフランス語のニュースがテレビで流れているので

解らない単語はフランス語風に言って

イタリア人に伝えていたのかもしれない。

 

 

 

その後、夫は職場からイタリア語語学学校に送られて

会社のお金でイタリア語をきちんと勉強させてもらっていた。

仕事のレベルと語学のレベルが駆け離れすぎていては不味いと思ったのだろう。

 

お陰様で、夫の喋りのレベルは更にパワーアップしていた。

 

 



 

 

 

いつだかフィレンツェのモスクに

金曜礼拝の日にイスラム教徒の意見が聞きたい

山のようなジャーナリストが取材に駆けつけたことがあった。

 

 

もちろん夫もそこにいて

彼らにとって「聖なる金曜日」に

静かにお祈り出来ないことにイラついていた。

 

 

ジャーナリスト達は他の日にも来れたのだ。

だけど、わざと金曜礼拝の日に駆けつけて

取材をしようと試みたのだ。

 

 

イライラマックスに達した夫は

 

「なんで他の曜日でも来れるのに

 僕達の礼拝の日を邪魔するように取材に来るのか!?」

 

ジャーナリストはタッグを組んで

金曜日に取材に行こうと結束したのだろう。

 

 

 

そこでバングラディッシュ人でお祈りにきてい男性が

「人種差別だ!」とジャーナリスト達に向かって言った。

 

 ↑こういう軽口を記者達は拾って新聞に書きたいのだ。

 

 

夫はその声を聞いて、バングラを睨みつけ真顔

 

「違う!人種差別ではない!

 僕はイタリアで働いて税金もきちんと納めている!

 国籍だってイタリア国籍を取った!

 

 宗教が違うだけでこの扱いはなんだ!?

 他の宗教の礼拝中に記者達が邪魔しに行くことはあるのか?

 

 無いだろうが!!!???

 

 僕達の聖なる金曜日にリスペクトを持てと言っているのだ!

 わざわざこの日を狙って騒ぎを起こす火種を持ってきたのは

 お前達、記者だろうが!」

 

 

その時、マイクを持っていたイタリア人の記者が

夫のことを抱きしめにきた。

彼の目は潤んでいた。

 

まるで、

俺達、グル組んで押しかけて、ごめんよーえーん

 

と言っているようだった。

 

 

そしてこのシーンは新聞やニュースに取り上げられ

職場の同僚が「夫が叫んでいる写真」を見つけては

スマホに送ってきて、

 

何で君がこんなに新聞に大写しになっているのか!?

 

と驚いていた。

 

 

モロッコにいたら政治家になれたかもねチュー

 

もう少し正確なイタリア語が話せたら

イタリアでも何者かになれたかもね。

 

 

だけど、夫は「大モノ」になることは望まない。

大モノになると、すぐにやっかみを受け

簡単に首を斬られることを知っているからだ。

 

 

だから彼は常にサブに徹する。

サブでいながら、お気楽に人生を楽しみ

何か問題があると

 

「やるなら、やるよ、外に出な!」

 

と言って、コテンパンに言葉で相手を打ちのめすのだグラサン指差し