前回の続きです。




ハスミとサクヤが

真っ暗な中、

小屋に身を潜めていると

しばらくして、

遠くの方で声が聞こえた。



村が騒がしい。

外の様子を伺うと、

村中が松明の炎で明るくなっていた。

無数の松明の炎が

山の中を走り回る。

予定よりずっと早く

村人達に気づかれた。



友人達は村の出口付近で見つかり、

ハスミとサクヤも程なくして見つかった。



ここからはハスミの言葉で書いていきます。








山の上にたくさんの松明の炎が見える。

遠くで声が聞こえる。

生贄だった友人は、サクヤの友と逃げた。

生贄が逃げたことを知った村人たちは

「逆賊だ」と追いかけた。

村から逃げた生贄が許されるはずはなく、

見つかったら殺される。

逃げ切るために計画は練りに練った。

二人はサクヤの村に逃げるはずだった。

村人たちに見つからずに逃げるために

サクヤ達は、村と村の間を往復するたびに

その間の道に隠れ場所を見つけ準備した。

サクヤの村でも友人を受け入れるべく

準備がなされていた。



私はサクヤの子を身籠っていたから、

私達しか知らない隠れ家で

サクヤと二人身を寄せ合って隠れていた。

怖かった。

予定よりずっと早く見つかったから。

まだ祭りまでに時はあったし、

普段は友人のことなど見向きもしない村人たち。

見つかるはずなかったのよ。

計画通りいけば見つからなかった。

それが、見つかった。

逃げたその日の夜に。



2人は村の出口付近で見つかり殺された。

私とサクヤも見つかり、

私は屋敷の奥に監禁された。

サクヤは縄で縛られ、

木の棒で叩かれ続けた。

食べるものも飲むものも与えられず、

計画の首謀者は誰かと問われ

死ぬまで叩かれ続けた。



サクヤは吐かなかった。

私がサクヤに会えた時には、

サクヤの命の灯は消えかけていた。

 

「さくや!さくや!

目を覚ましてよ、さくや!」


いまにも消え入りそうなサクヤを抱きしめ、

目を覚ましてと呼びかけていた。

呼びかけにサクヤの指が微かに動く。


「さくや!!」


もう一度呼びかけると、

サクヤの瞼がゆっくりと開く。


「はすみ…」


命の灯を最後に振り絞るかのような

消え入りそうな声で私を呼ぶ。


「は…すみ…て…を……」


サクヤの手が空を切る。

その手を慌てて掴んだ。


「わら、って……きみの………す…き……」


頷いて泣きながらも笑顔を作ろうとした。

なんとか微笑み…

その笑顔を見たサクヤは、

ほっとしたような表情を浮かべ

腕の中で息を引き取った。

サクヤを抱きしめたまま泣き叫んだ。