先週末、蔵前の古書店でふと目にとまった絵本「いもうとのにゅういん」。
主人公は幼稚園へ通う女の子。ある日、妹が盲腸で入院した。お母さんは妹の看病で家にいない。お父さんとふたりっきりの夕食。いつもの賑やかな家と雰囲気が違う。妹を心配するお姉ちゃんの気持ちが描かれている。
絵本を手に取りながら思い出したのは、3歳年下の自分の妹が盲腸で入院した日のこと。
私はすでに中学生だった、と思う。学校から帰宅すると、祖母が妹が入院したから見舞いに行けという。「笑わせたらダメだよ。お腹が痛むから」と釘をさされた。自宅から徒歩5分ほどの病院へ急いだ。冬の夕方で既に外は真っ暗だったが、病室はやけに明るかった。
妹の病室に入るなり、ベッドに横たわっていた妹がこちらを見て「なんで、それを着ているの!」と驚き、怒った声を出した。私は妹がお気に入りのコートをわざと着ていったのである。悪戯好きな姉である。母が妹をなだめ、私を叱り、小さな声で「笑わせたらダメよ」と祖母と同じことをいう。私は妹が笑いそうなことを片っ端から言い、母に「帰れ!」と言われ、10分も経たないうちに病院を後にした。
妹がふたりめの子供を産んだ時、母は体調を崩していた。その代わりに義理の母が妹の家に2週間ほどの予定で滞在し、夫(義母のむすこ)と長男(義母の孫)の面倒をみてくれた。
ある日、義母は産まれたばかりのふたりめの子供を見に病院を訪れた。なんと、義母はクローゼットにかけてあった妹の新品のコートを着て現れた。
「これ、いいわね。着心地もとってもいい」とご機嫌だったらしい。妹は断腸の思いでそのあったかいコートを義母に差し上げたという。
妹はいつも冬に入院し、災難にあう。気の毒だ。ひとりめの長男を産んだ時も冬で、当時、妹夫婦たちは秋田に住んでおり、実母が1ヶ月ほど滞在した。妹が入院中に災難にあったのは婿殿だったと思う。毎晩、隣の部屋で眠る嫁の母の咳払いを気にしながら、テレビの音を“ちっさく”して見ていたという義理の弟。
まあ、みな、お互いさまということで。