友人がNYへ戻る日、私たちはいつも品川駅で待ち合わせ、京浜急行に乗って羽田まで行く。品川駅は大きく、出入り口がたくさんある。前回、なぜか友人が待ち合わせ場所を間違えてなかなか会えなかった。今回はそのようなことがないよう、事前に確認したにも関わらず、また、なかなか会えなかった。

 

「わかった。品川駅はもう無理。次回からは空港で待ち合わせよう!」と、私。

「怒ってる?」と、友。「怒ってない!」と、私は答える。

 

いつの間にか日本の生活に慣れ、迷子になることも以前よりは少なくなった。だから、海外からたまにやってくる人のことを考える気持ちが疎かになってしまったのだろうか、反省である。

 

今まで、帰りのフライトは平日ばかりだったが、今回は初めての土曜日。品川駅も空港も大混雑である。荷物をチェック・インするのに1時間以上もかかってしまい、食事は出来たけれども、ゆっくりとは程遠い。慌ただしくハグをして、彼女はゲートの中へ消えて行った。

 

ひとり帰りの電車へ向う時、いつもどこか淋しい。荷物のチェック・インを待つ間、友人が母親に電話をした。その時のお母さんは短い会話だけをして、淋しさを消すようにさっさと切ってしまった。いつも見送る方は淋しい。

 

自宅へ戻り、彼女からのお土産が入った袋を開けてひとつずつ手に取る。

NYで有名なスーパー・マーケットのロゴ入りエコ・バッグ、日本製のものよりずっと大きいサイズのキッチン・タオル、マリーベルのホットチョコレート。

 

私はひとつの物を充分に使い切ってから処分することが多い。そろそろ買い替える時期だなあと考えていたエコ・バックとキッチン・タオル。まるで、それが必要なことを知っていたかのように袋の中から出てきて嬉しくなった。

 

待ち合わせ場所の行き違いはあったけれども、なんの打ち合わせもなく必要なものが入っていた彼女からのギフト・バッグが、ほんの小さな奇跡に思えたのである。