時々、あるパン屋さんのカレーナンが無性に食べたくなる。白いふんわりしたナン(北インドやパキスタンなどの国でたべられている)風のパンの中にピリ辛のカレーが入っており、食べる時にトースターで温めるとカレーがとろ〜っと溶けて本当に美味しい。

 

先週末、散歩の途中でふと食べたくなった。夕食まではまだ何時間もある、おやつに食べようと、徒歩で行けるデパートへ向かった。

 

さて、ショーウィンドウを見ると1個しか残っていない。他に食べたいものもなく、なんだか申しわけないような気持ちで1個だけ買った。店員さんは、まず、ビニールの袋に入れ、更に小さな紙の袋にそれを入れて渡してくれた。たった1個の小さなパンにこれだけして頂けるなんて、心から有り難い気持ちになる。お礼を言うと、マニュアルにはない笑顔と言葉で返してくれた。その店員さんと交わした一言二言で、一日がとても気持ちよく過ごせる。また、このお店で買いたいと思う、今度はもっとたくさん買いたいと思う。

 

今週金曜日からしばらく故郷へ帰る。母実家の叔母(母弟の妻)が施設に入所したので会いに行くのである。これで母実家はほぼ空き家となった。3年前に叔父が他界し、叔父と叔母の子供たちは市内にそれぞれの家がある。

 

連休のせいか来週月曜日まではどのホテルにも空きがなかった。母実家は街なかにあり、駅からも近い。デパートまで裏口なら徒歩1分で行ける便利な場所である。今回は従兄弟のお言葉に甘えて宿泊することにした。「どの部屋で寝る?」と問われ、何故か瞬時に「仏間!」と答えた。「えっ?」という従兄弟。彼は仏間に寝具を用意していることだろう。

 

仏間には祖父母と叔父の大きな写真が飾られ、仏壇には先祖代々のお位牌が並んでいる。

 

施設に入所した叔母が元気な姿で家へ戻ってくるとは思えない。このまま、誰も住むことなく、そのうち取り壊されることを考えると、今回、ちょうど良い機会である。あちら側へ行ってしまった皆さんに言えていなかった感謝の気持ちを伝えよう。亡き母が生まれ育った家(改築はしてある)で母を想うのもなかなか良いではないか。

 

しかし、よ〜く考えたら、古くて大きな家に夜ひとり。どうしよう、なんか怖い気もする。お向かいの家は高校の同級生で現在も親しくしている友人宅である。心細くなったらそちらへ走ろう。ぬかりなく、既に友人には伝えてある。

 

友は「最初からウチに泊まればいいのに」と呆れている。