大きな道路がふたつ交差する騒々しい場所に大型のゲーム・センターがある。
いつも車が激しく往来し、広い歩道を自転車で走る人も多い。そのゲーム・センターの前に横断歩道があるので、いつもそこで信号が変わるのを待っている。
「早く青になってくれないかなあ」と、行き交う車を見ながらそればかり思う。この猛暑の中ではその時間が特に長く感じられる。
何気なく後方にあるゲームセンターの前に視線を向けると、浴衣姿の女性従業員がバケツから水を柄杓ですくい、歩道にまいている。
打ち水。
懐かしい光景である。ビルが建ち並ぶ通りで目にするとは思わなかった意外なその光景に、思わず笑みがこぼれた。大通りにまくわずかな打ち水にどれだけの効果があるのかはわからないけれども、その様子を見ただけで不思議と涼を感じたのである。
年々最高気温が更新される日本の夏。「暑い、暑い!」が口癖になってしまったけれども、少しは自分で工夫をしてみようと思う。
風鈴はどうだろう。部屋の中に下げ、扇風機で風を送ったら涼しい音色が聞こえるだろう。
視覚、聴覚、味覚で涼を取る方法を考え、それを楽しみながら夏を乗り越えるしかないと思うようになった。
夏が涼しいと言われるノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークなどへ避難できれば良いが、それは夢のまた夢。
風鈴、スイカ、かき氷、手軽に出来ることをとことんやって涼をとることにしようと思う。
そうだ、ベランダに打ち水をしてみよう。