書店で本を選んでいる時に背中の方から聞こえてきた会話。
「私、ミステリーは好きじゃないのよね」と一人の女性。
「私も嫌い!」と、お連れの女性。
「私、サスペンスも好きじゃないのよね」と先の女性。
「私も嫌い!」と、同じやりとり。
「好きじゃない」と「嫌い」は違うと思うのだけど、後者の人は前者の人に同意する意味で使っているようである。
私は鱈子(たらこ)はあまり好きではなく、イクラは嫌いである。もし、誰かが作ってくれた御膳にタラコがのっていたら食べるけど、イクラはご辞退したい。
最初に食べたイクラが生臭かったのが理由である。その後に何度か「これは新鮮で美味しいわよ」というものを試したけれど、味を好きになれなかった。「どうして食べないの」と聞かれたら、それを説明すると思う。でも「私、イクラは食べないんです」だけで誰もそれ以上は何も言ってこない。「あら、美味しいのに」とは言われるけれど。たまに「だったら、私に頂戴」という人もいて、それはとても有り難い。
「嫌い」は、年齢を重ねてから人との会話であまり使わなくなった言葉のひとつになった。
その言葉は、時にとても強く響く。
だからこそ、書店で聞こえてきた何気ない日常的なその言葉にドキリとした。
特に難しい言葉でも何でもないのだけれど。