映画「国宝」

 

ストーリー:

 

後に国の宝となる男は、任侠の一門に生まれた。

 

この世ならざる美しい顔をもつ喜久雄は、抗争によって父を亡くした後、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へ飛び込む。そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と出会う。正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人。ライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、多くの出会いと別れが、運命の歯車を大きく狂わせてゆく...。(公式サイトより)

 

作家・吉田修一 「国宝」上(408ページ)下(432ページ)を映画化

 

喜久雄(吉沢亮)は人間国宝に選ばれた時のインタビューで「景色を探し続けている」と語った。喜久雄が追い求めた「景色」とは、いったいどんな景色なのだろう。

 

子供の頃に見た景色、抗争で父の命が奪われた雪が降る夜の景色、歌舞伎界へ飛び込んだ時の景色、半二郎の代役を務めた時の景色、落ちぶれた時の景色、再起した時の景色、国宝になり舞台で舞った時の景色。その時ごとに景色は違う。

 

喜久雄が舞う最後のシーンで、観客側から見る舞台の景色と喜久雄が舞いながら見る景色が交互に映し出される。観客と喜久雄が見る景色はまったく違うものであることがあからさまにわかる。

 

人間国宝・片岡仁左衛門の息子である片岡孝太郎の言葉。

 

「うちに国宝おりますが、歌舞伎の人間国宝とはその人物が歌舞伎を演じている時が国宝になります。普段は人間国宝でなく、普通の人なんです」

 

歌舞伎役者である喜久雄(吉沢亮)も俊介(横浜流星)も、稽古をしている時と舞台に上がっている時以外は普通の人である。

 

喜久雄が探し続けている「景色」は、他のことを一切求めず、何かを犠牲にしてでも欲しいもの。

 

景色とは「異なる場所」ではなく、ある日、いつもの景色が今迄見たことのない「景色」に見えること。

 

一冊の本を読み終えて「景色」が変わることもある。誰かの言葉を聞いて「景色」が変わることがある。ものの見方が変われば「景色」が変わる。

 

舞台上、紙吹雪が舞う情景に「きれいやなあ」と呟く喜久雄、それが彼が求め続けた景色だろうか。

 

映画と小説では結末が異なる。

 

喜久雄が見た「景色」がどんなものなのか知りたくて、昨日から小説を読み始めた。