別荘へ来たのは半年ぶりだという友の後ろについて建物の中へ入る。すべての雨戸を開けると、真っ暗だった室内に少しずつ光が差し込んだ。
しばらくして、トイレから出て来た友人が声をあげる。
「トイレに黒カビがない!どうして?」
湿気の多い軽井沢、いつも半年ぶりに来ると便器に黒カビが発生しているという。
その黒カビがなく綺麗な状態であることに、友は首をかしげる。
そのあと、キッチンへ移動した友が叫ぶ声。
「何、これ? 昨年の秋にシンクを綺麗に掃除していったのに!」
珈琲だろうか、何だろう?サビのような赤茶色のシミがシンクの中に広がっている。
「どういうこと?誰か入ったのかしら?」
「アメリカだと、誰かが住んでいた、ってこともあるわね」と私。
実際に、屋根裏部屋に他人が住んでいたという事件がいくつもある。
「え〜、それはないと思うんだけど・・・」と、友は不思議そうな顔をする。
雨の日に庭に現れたリス。リスは可愛い。でも、害が多い。庭の果実が食い荒らされたり、電線がかじられたりすることがある。
昨年の秋に友が家族と別荘を訪れた時、天井から何か音が聞こえてきたという。
「リスとか、小さなものじゃないわね。ハクビシンかも」と友は冷静に言う。
まさか、ハクビシンがトイレやキッチンを使ったとは思わないが、屋根裏部屋に住んでいると聞いただけでぞっとする。
自然が豊かな場所に住むといろいろなことがある。ガラス窓に鳥が突っ込んで来てぶつかり死んでしまう。穴を掘ってその死骸を埋葬するという人もいる。その穴も浅すぎては小動物に見つかり餌になってしまうから、ある程度深く掘らないといけないらしい。小動物の死骸が庭に横たわっている時もあるらしいが、それはどうするのだろう。
私は虫が苦手である。カメムシが出てきただけで声をあげる。大きな蜘蛛を発見しただけでぎょっとする。
その様子を見て、「あほらしい」と友は呆れる。
自然の多い所には虫や小動物がいる。それを怖がっていては別荘など持てないのだろう。
私にはあらゆる面で一生無理である。