アート・ドキュメンタリー : 「ロスト・レオナルド ~史上最高額で落札された絵画の謎~」
(2021年 原題:THE LOST LEONARDO)
油彩画「サルバトール・ムンディ」は、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたとされるイエス・キリストの肖像画。
レオナルド・ダ・ヴィンチの傑作といわれ、長い間所在不明だった絵画がニューオリンズのオークションに出展され、NYの美術商が購入した。2005年の買値は$1,175(約13万円)。当時はダ・ヴィンチにかなり近い人物が描いたと考えられており、重ね塗り、損傷が激しい部分もあった。
すぐに修復を依頼し「これは本人かも知れない」という意見が出た。その後、修復に時間をかけ、2013年に1億2,750万ドル(約157億円)でロシアの大富豪の手に渡り、2017年にNYクリスティーズのオークションで史上最高額の4億5,000万ドル(約510億円)で落札された(落札者は非公表)。
このドキュメンタリーでは「サルバトール・ムンディ」をめぐる様々な裏話が語られている。それに関わった実在の人物たちへのインタビュー、それぞれの思い。本物か否かの議論がなされ、法外な金額で取引されるこの絵画は、本当にダ・ヴィンチの作品なのか。本物だと信じる人、否定する人、わからないという人。
2017年、オークションにかけられる前に一時的に一般公開された絵画に集まった人たちは、「魂が引き寄せられる」と言う人、感動で涙する人、疑っている人はいない。
史上最高額で取引されたこの絵画はダ・ヴィンチが描いたものか否かはわからず、現在は所在不明とされている。
美術家の山田五郎さんの高校の先輩。その方もまた美術家なのだけれども、彼を「美術家になる!」と決心させたゴッホの絵「アルピーユの道」がその後に贋作だとわかったとのこと。大きなショックを受けたらしいが、その時の先輩の言葉が素晴らしい!「作品は偽物だけど俺の感動は本物だった」
土曜日の午後、銀座の裏通りを歩いた。小さな画廊がいくつもあるが、多くはお休みで、開いているところは、なんだかとても入りにくい。小さければ、小さいほど入りにくい。閉まっている画廊のガラスのドアに顔をつけるように中を覗く。
日曜日、上野にある東京国立博物館へ行ったが、チケットブースの長蛇の列を見て諦めた。
上野公園内の緑の中を歩く。雨上がりで緑色が深まった木々の生命力が伝わってくるようで、私の呼吸も深くなる。少し歩くと、東京藝術大学があり、明治期のレンガ建築に時代の趣を感じ、しばしのあいだ立ち尽くす。
時々「何かに感動したい!」と思う時がある。そういう時は映画を観に行くか、美術館へ行くが、たまにこのような通りを歩くのもいいなあ、と思う。