5月8日(木曜日)

 

晴天! 散歩をいつもより早く切り上げ、朝食代わりにカプチーノを1杯。

 

11時開店のお蕎麦屋さんで朝食兼ランチの為、10時過ぎに家を出る。お店迄は車で約30分。車窓から町を眺めて気付いたことがある。普通はオレンジ、緑、赤のセブンイレブンの目立つ看板が地味に茶色で、牛丼・松屋の看板も色調が抑えられている。町の景観を守るためらしい。

 

友人お薦めのそのお蕎麦屋さんは予約を取らないお店「浅間 扇」。到着順に名前と人数を書いて待つ。私たちは15分前に到着して先頭から3番めだった。お店の駐車場に続々と車がやってきてリストに名前を書いていく人たち。それほど大きなお店ではないので、1巡目に名前を呼ばれないと30分以上待つことになる。

 

11時に名前を呼ばれ、天ぷら蕎麦を頂き、大満足で店をあとにした。

 

帰宅して最後の掃除に励む。バルコニー、各部屋、お風呂場、キッチン。今夜はお風呂を使わずに、近くにある温泉に行くことにしている。

 

明日の午前に東京へ戻るので、冷蔵庫の残り物を使って夕食。とはいえ、料理が得意な友人が作るものは何でもご馳走になる。

 

午後8時過ぎに温泉へ。

 

暗い夜道を進んで行くと、オレンジ色の灯りの集団が見えてくる。それはホテルの各部屋の灯り、ルグラン軽井沢ホテル&リゾートの中にある「八風温泉」。

 

時間が遅いせいか、温泉内はほとんど貸し切り状態。広い露天風呂には私たちの他に2人のお客さんしかいない。

 

あいにくの曇り空だが、雲の切れ間におぼろ月が見え隠れする。これもまた幻想的である。「明日はお天気が崩れるわね」と友。

 

雲の間にぼんやりと顔を出した月を見上げながら「これは天国だね!」とはしゃぎ、お湯のなかをすいすいと泳ぐように移動する私に友は言う。

 

「なによ、温泉に行くって言った時に気乗りしていなかったくせに。反省しろ!」

 

「謹んで反省します!ありがとうね、連れて来てくれて。ホント、まるで天国!」他に言いようがないのか、私は天国を連呼する。

 

おぼろ月といい、体がとろけるような湯加減といい、あまりにも心地よく「私達、こんなに幸せで、もしかしたら今夜が人生最後の日かしら」と、月を見上げながらふたりで笑う。

 

露天風呂のまわりから何匹もの蛙の鳴き声が合唱のように聞こえる。5月から7月は繁殖期になるらしい。姿は見えず、声だけ聞こえてくるぶんにはなんとも風情がある。姿などみたら大変なこと、素っ裸で逃げる。

 

カエルの鳴き声を聞きながら、長い間おぼろ月を見上げていたら、いつのまにか露天風呂には誰もいなくなっていた。

 

近隣の灯りもなく、静まり返った家に戻り、温まった体で布団の中に潜り込んだ最後の夜。