5月の連休、6泊7日で友人が所有する軽井沢の別荘に滞在した。軽井沢は28年ぶりである。前回は11月の秋、紅葉の季節に2泊だった。

 

この友は夫の義理弟の紹介だった。「知り合いが数ヶ月後にNYへ留学するので宜しくお願いします」と連絡があった。後に大切な友人の一人となるこの女性は、NYへ到着する前にあらかじめ手紙を送ってきた。現在シドニーに住んでいること、数ヶ月後に2年の予定でNYに留学すること、NYに到着したらご連絡させて頂きますので宜しくお願いしますとのこと。いろいろな人たちが私達夫婦を訪ねてきたが、後にも先にも、ご本人が事前に手紙を書いて送ってくれたのはこの人だけだった。

 

どんな人だろうと思いながら待っていた。かかって来た電話の向こうの彼女は緊張した様子で自分の名前を告げた。私は「Mさんですか、ご連絡をお待ちしていたんですよ」と答えた。

 

後に知ったのは、その時の私の言葉に安堵したとのこと。私に電話をする前に東京の親しい友人から紹介されたある人に連絡をしたら「あっ、あ〜」との素っ気ない応答に落胆したのだという。それが理由か、私の何でもない言葉に安堵したというのは私にしたら嬉しいことである。

 

春らしい天候に恵まれた5月3日午後1時過ぎ、友人宅のある恵比寿から車で出発、女二人旅の始まりである。都内の高速はとても順調に進んだが、途中から渋滞、一度休憩し、軽井沢へ到着したのは午後5時過ぎだった。

 

友人の別荘の庭は枯れ葉に埋もれ、玄関を開けると半年のあいだ人が出入りしていなかった滞った空気を感じる。すぐに1階と2階のすべての窓を開け放し、家具、ソファやベッドにかけてあった埃除けの布をとった。

 

少しずつ、建物の中に停滞した空気が動き出した。

 

ここ数年で新しい別荘が増えたらしく、あちこちに灯りが点滅している。開け放した玄関やバルコニーから、近隣の子どもたちの声や家族の笑い声、音楽が聞こえてくる。通り向こうのお宅の小さなバスケット・コートから響くボールの軽快な音から休暇を楽しむ弾んだ気持ちが伝わってくる。

 

小さなお祭りのような“わくわく感”で、軽井沢での連休が始まった。