「絶望名言」NHK<ラジオ深夜便>の 人気コーナーを文庫化。
本の表紙には4つの「絶望的」な言葉が書かれている。
「明けない夜もある」(マクベス)
「人生は地獄よりも地獄的である」(芥川竜之介)
「無能、あるゆる点で、しかも、完璧に」(カフカ)
「絶え間のない悲しみ、ただもう、悲しみの連続」(ドストエフスキー)
これらの言葉に共感、癒やされる人が多いと評判らしい。
若い頃は、太宰治「人間失格」の冒頭「恥の多い生涯を送って来ました」を何かの折にふざけて引用していたが、もはやこれはネガティブな言葉ではなく、私の人生そのままを語っており「まさにその通りです」と受け止めている。そこには、悲観も卑下もない、もちろん「絶望」でもない。
ドラマ「風のガーデン」で、緒形拳さん演じる医師がつくる独創的な花言葉の中に「あまりにも明るすぎる存在はまわりが辛い」というような意味の花言葉があったような気がする。
それを聞いた時「確かに!」と、ふっと笑いが込み上げてきた。
若い頃、友人を元気づけようとして失敗したことがある。おそらく、その時の私は元気過ぎたのだと思う。
母が入院していた病棟に30~40代の男性が新しい患者さんとしてやってきた。本来入院するべき病棟が満室の為に一時的なもの。何らかの事故で車椅子での生活になり、退院後は介護付き施設に入所するらしい。
ある日、彼が退院後に入所することになっている施設の若い女性介護士がやってきた。男性患者は自分の体のこと、これからの生活が不安だということを彼女にもらした。
介護士は「大丈夫!神様は乗り越えられる試練しか与えない!だから、大丈夫!」と、大きな声で励ました。その声はフロアー中に響いた。隣室の開いたドアから聞こえてくる彼女の大きな声、きっぱりとした言い方から、男性患者を心から励ましたいという気持ちが伝わってきた。言葉そのものよりも彼女の気持ちが強く響いた。
男性患者は「そうかなあ。本当にそうかなあ」と呟いた。
人それぞれに個性があり、性格が異なる。自分にふさわしい言葉を見つけることが出来たら心強い。
「絶望名言」どんな言葉があるのだろう、読んでみようと思う。