「私の為に長生きしてね。私、話し相手がいなくなったら困るわ」と、唐突に言う友。

 

「えっ、いや、私、まだそんな年齢じゃないし・・・」と、その言葉に戸惑う。

 

まあ、確かに、年齢関係なく「最後の日」は突然に訪れるかも知れない。「そんなこと言われても〜」と笑ったが、その言葉、正直に言うと「なんだか嫌だなあ」と思う。

 

持病がある母の身体が弱り始めた70歳代後半の頃、父の妹(私にとっては叔母)が母の手を握りながら言った。

 

「さっちゃん(母)、私の為に長生きしてね」母は「うん、うん」と頷いた。

 

叔母は一生懸命に母を元気づけようとしていたのだと思う。

 

このふたり、年齢が近く性格がキツイとろこが似ているせいか、母がお嫁に来た当初は喧嘩が多かったらしい。何十年という月日を経てお互いに温厚になったんだなあと思い、私は感動した。

 

ところが、叔母が帰ったあと、母は言った。

 

「なんで、あの人の為に生きなきゃいけないのよ」と。

 

妹と私は、この母を「本当にどうして、こうなんだろう。若い頃の喧嘩だって、おばちゃんだけが悪いわけじゃないと思うわ」と嘆きながらも、笑ってしまったのである。

 

ところが、つい最近、自分が同じことを言われて「なんで、あなたの話し相手になる為に長生きしなきゃいけないのよ」と思った。

 

間違いなく母の血を引いていると実感した瞬間である。