テレビを見ていたら「謎の置き石」がニュースに取り上げられていた。

 

神戸市の住宅の門扉などに「不審な石ころ」が見つかったとのこと。石ころによる“マーキング“は、空き巣や強盗犯などが、事前の準備として置いた可能性があるという。警察は犯罪のサインとして警戒をしているらしい。

 

1980年代、アルバイトをしていた頃のこと。恵比寿から下町の住宅地までお使いを頼まれた。渡された地図の通り行けば間違いないだろうが、狭い路地に入ったり、同じような道がいくつも入り組んでいる。歩いている人も見当たらない静かな場所だった。私は方向音痴で普段から苦労している。行きは無事に辿り着いても、帰りはどうしよう。商店やビルの多い街中であれば、目印になるモノがたくさんあるが、住宅街ではそうは行かない。

 

私は曲がり角の家の塀に石を置いて歩いた。何度も曲がる道。何個も石を置いた。帰り道、迷子にならないためである。

 

当時、下町の狭い道の端に石ころはたくさん落ちていた。

 

その目印のおかげで帰りも迷子にならずに駅まで辿り着くことが出来た。もしあの時、家の人が「何これ、悪戯?」と私が置いた石を処分していたら、私は迷子になったはずである。置き石は役に立ってくれた。もちろん、帰り道、曲がり角で塀に置いた石ころを元に戻しながら帰った。

 

近年、スマホで位置確認が出来る便利な時代になった。誰が、迷子予防の目印に置き石などするだろうか。

 

もし本当に石ころを何かの犯罪の目印に使ったのであれば、ずいぶんと時代に合わないやり方だなあと思うのである。