数年前、大雪の後に訪れた青森県立美術館の白い箱のような建物は雪の中に埋もれるように建っていた。周りに雪が積み上げられて出来た雪壁は映画シャイニング(The Shining 1980)の迷路のようである。

 

美術館の1階中心にある広い空間、開放的な吹き抜けの天井、四方の壁に巨大なシャガールの作品「アレコ」の背景画が展示されている。

 

*シャガール「アレコ」

1942年レオニード・マシーンがバレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)のために振付けた作品。 美術はマルク・シャガールが担当し、4幕からなる作品に合わせ、4枚の巨大な舞台背景画(縦約9m×横約15m)を制作*

 

展示場の中心に無作為に置かれているキャスター付き椅子に座って自由自在に動き、好きな角度から眺めることが出来る。

 

屋外スペースには青森県弘前市出身の画家・彫刻家である奈良美智の「あおもり犬」。真っ白い犬の頭上に雪が積もり、下半身は地中に埋まっている。うつむいた顔が寒さに耐え忍んで座っているように見える。

 

*「あおもり犬」

美術館の隣にある三内丸山遺跡の発掘現場から発見され、お腹まで掘り出されたという状態をイメージした作品。大きさは高さ8.5メートル、横幅6.7メートル*

 

「あおもり犬」の上にどんどん降り積もる雪。

 

2階にある明るいカフェの大きな窓から見る景色、しんしんと降る雪を眺める。リラックスしてじっと雪が降るのを見るのはまるで瞑想のようで、頭の中も心の中も空っぽになった気分になり、身体が軽くなる。

 

この冬は昭和20年以来の豪雪とのこと。

 

「あおもり犬」が耐え忍び、春がやってくるのを待つ姿が思い浮かぶ。