パリ在住の辻仁成氏(作家、音楽家、画家)は街なかでたまに“マダム”と呼ばれることがあるらしい。長髪で細身だからだと思うが、辻氏は“ムッシュ”だと間違いを指摘するとのこと。
*男性は未婚者、既婚者の区別なく「ムッシュ」(Monsieur)なのに対し、女性は既婚者は「マダム」(Madame)未婚者は「マドモアゼル」(Mademoiselle)と区別されるのは差別であるとし、近年のフランスの行政では“Madame”に統一されている。ただし、口頭では10代の若い女性に対して“Mademoiselle”と呼ぶことはあるとのこと。
海外で日本人は若く見られることが多い。NY在住時、40才を過ぎた頃から”Mom”と呼ばれることが多くなった。それまでずっと”Miss”と呼ばれ続けてきたので、最初に”Mom”と呼ばれた時は軽いショックを受けた。
それは友人たちも同じで「最近、マム、と呼ばれるの」と複雑な面持ちで報告しあったものである。そのうちに慣れ、その言葉がしっくり来るようになった。決して嫌ではない。
以前、旅行でパリを訪れた友人が、“マダム”と呼ばれ“Do you mean mademoiselle?(あら、マドモアゼルのことかしら?”と返答し、相手が苦笑いしたという。当時、彼女は40才前後だったと思う。
“マダム”という言葉は子供の頃からテレビや映画で聞き慣れており、何か優雅なイメージがある。フランスに対する私の幼い頃のイメージから来るのだと思う。
日本では知らない人に対して「おねえさん」「おばさん」「おばあさん」「おにいさん」「おじさん」「おじいさん」という言葉をよく聞く。
何かもっと他の呼び名があればいいのにと思うが、長らく使われてきた言葉であり、その言葉に親しみを感じるという人もいるのかも知れない。
名前を知らない人に呼びかける言葉、なかなか難しいものだなあと思う。